選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞

『にこたま』(渡辺ペコ)

  • 「気になる!非常に気になるラブストーリーです。ふたりの行方も気になるし、周りの人もどこかに居そうな人達ばかりで、いろんな事に悩んだり、出会ったり。やさしくて丁寧な絵柄も好きです!いっしょに迷いながら、共感しながら読んでみて下さい!」

    「リアル、リアル、りーあーるー!怖い。面白い。さすがです。恋愛、結婚、妊娠、仕事、収入、親。それが一番入り乱れる三十路付近。大人になりかけ、なりそこない。そして男の弱さと変な優しさ。読んでいて寒気がした。すぐ自分に降り掛かりそうな話ばかり。でも怖いだけじゃなくて面白いんだな?」

    「がっつり同年代な登場人物たちのあれやこれやが、分かりすぎて逆に具合が悪くなる。30近辺の女子必読な作品なんじゃないでしょうか。誰も悪くないのに、なんかうまくいかないなあってときに、読んだら少し救われるかもしれない。でもその逆もしかり。まあでも、みんなおんなじような事考えて生活してたりするんだなあと、ちょっとした安心感も与えてもらったりしたので、なんにせよ私がこれから健やかに生きていこうとする上で必要な作品でした。ありがとうございます。」

    「 29歳という年齢はきっと昔からドラマや小説(もちろんマンガも)の設定としてたびたび取り上げられてきたはず。そしてその多くはやっぱり、大人未然のモラトリアムがモチーフだったはず。この「にこたま」も言ってしまえばそんな設定なのだが、それにしても作中の29歳カップル(交際9年、同棲5年)の極まった宙ぶらりんさ加減はどうだろう。オトコ29歳の幼さ経験不足さと、女子29歳の微温的先延ばし。三十路手前にしてこの宙ぶらりん感は、それゆえになんとも現代的でリアルに映る。で、たぶん、今は30代になっても40代になっても、そんな宙ぶらりん感はついて回るのだろう。そんなふうに自分の来し方を重ねてしまう読み手の自分がいます。
     仲良く、経済的にもまあ十分ではないがそこそこ充足していて、互いに相手に優しく、でもどことなく寄る辺なく足元の定まらない感じが拭えない。そんな29歳同棲カップルが突如、直面する「現実」と、そんな現実に直面しても変わらない/変えられない優しさ。シリアスな局面になるほど茶化すようなことしか言えない、そんな笑っちゃうくらいの悲しさ。当人にとっちゃ逃げ場がないだけにキツかろう。既刊2巻、どう転んでもこの先は苦さを残す結末しかないだろうけど、サブカルちっくな小ネタ(マン盆栽とか)に脱力の笑いを噛み締めながら最後まで見届けるべき。」

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