選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞

『さよならもいわずに』上野顕太郎

  • さよならもいわずに (ビームコミックス)

  • 「過剰にも思える比喩表現や映画のような終わり方などわざとらしく映るかもしれません。しかし、これが「最 愛の人を亡くした作者にとっての真実なのだ」と思うと、心臓を掴まれたような感覚にとらわれ、息もでき ないような切ない感覚が押し寄せてきます。時間の経過と共に事実を受け入れ、未来へ進んでいこうとする 作者の心の動きは非常に丁寧に描かれ、読んでいる僕達に突き刺さります。」

    「読んで「せつない」という意味の深さ、「心にポッカリ穴が空いた」という表現の的確さを感じました。」

    「愛する妻を亡くしたひとりの漫画家の、深い悲しみが文学的な力と美しさを伴って生まれた希少な作品。作 者の内面がそのまま漫画になったような、生々しくて危なっかしくて芸術的な表現の結晶は、読む者の心す らえぐるほど。」

    「泣きました。愛する人を失くした時の言葉にならない程の喪失感、絶望感、悲壮感。心理描写が本当に上手 くて、読んでいて胸が痛んだ。細かい所まで描かれていたので凄くリアルだった。漫画はたしかに客観性も 大切かもしれないけれど、この作品に関しては逆に客観性がなくて良かったと思う。哀しくて何度も読むの は辛いけれど、一度は読んでみて欲しい漫画。」

    「すごい、と圧倒されます。通常、身近の亡くなった人を題材とする作品は、故人の病気とかに負けない、け なげな姿が中心に描かれ、美しく磨き上げられた思い出として語られるものばかりです。しかしこの作品は、 作者がいかに悲しんだかという主観が中心で描かれ、故人の生前のエピソードも、楽しいばかりでない日常 の出来事が生々しく描かれ、作者の全てを曝け出しています。それなのに、作品として冷静に全体を構成す る視点も貫かれてもいます。すごい、作品です。」

    「衝撃的すぎた。「心を刺す」という表現があるが、この作品は「心をえぐる」という表現の方が合っている。 圧倒的。」

    「妻のキホが若死した様子を描くという暗い内容だが、それだけに目を離せなくて一気に読んだ。「独りの時 はいつも階段を使っていたが/キホと一緒の時はスロープを使っていた/それをなぞってスロープを行く/ この日から階段は使わなくなった」という部分とか、そういうこまごましたのがイチイチ心に刺さる。」

    「妻を突然失った悲しみ、喪失感は、描きようもないはずと思われるのに、それでも描いてしまう漫画家の「業」 に、深く心を動かされます。そしてそれを通じて、妻の死に折り合いをつけていく姿が、二重に心を打ちます。」

    「これは本当に胸に突き刺さりました。命が有限である以上、大切な人は必ずいなくなる......という当たり前 にしてものすごく残酷な事実。」

    「今年一番心が震えた漫画。感動した、泣いた...なんて簡単な表現はしたくない。唯一無二の大切な妻を亡く したウエケン。その苦痛はわたしには想像もできない。(そもそも未婚だし。)漫画家という職業ゆえに、そ れを作品するという選択をしたウエケン。苦悩が作品からも伝わってくる。しかし、妻がたしかに生きてい た証拠を残すため、見事描き上げた。(のだとおもう。)その作品が、人の心を動かさないわけがない。万人 に薦める本かといわれたら疑問だが、自分の大事な人にはぜひ読んでほしい。」

    「正直、万人に読ませたい!という物語ではないし、解り易い笑いや面白さがあるわけではない。でも、この、 ひたひたと迫る感情を、なんと言えば良いのだろう。まだ「誰か」を喪ったことのない私にさえ感じさせる、 静かな、しかし強い強い悲しみとさみしさを。 ...だから、読めるなら、読んでほしい。小説や映画と同じ ように(と言っては語弊があるかもしれないが)、間が、語ってくるのです。コマの間から、声が聞こえる。 声でない、だけど確かな、「彼」の声が。」

    「ギャグ漫画家としても異能の作者が、妻との死別を描いた作品。2カ所ほど、衝撃で手が止まるほどのシー ンがありました。この絵についている言葉はほんの数文字。でも絵だけでも文字だけでもこんなに「伝わる」 ことはなかったでしょう。絵+言葉で描くことによってどれだけ伝わることが増すんだろう、とマンガの凄 まじさを体験しました。」

    「血を吐くようなセリフが胸に突き刺さる。めまいがするように画面の奥に引き込まれる。長い時間を一緒に 過ごしてきた連れ合いを持つ身には、ずっしりと重い手応えというか、「きずあと」を残すような体験を与 えてくれる本です。」

    「こんなに切なくなるなら読まなきゃよかったと思えるくらい、心に迫ってくる漫画でした。嘘偽りのない表 現、目線、間が心を締め付けてきます。泣きたい人にお勧めな漫画です。」

    「これは、ずるいので、一次選考の時に、外しておきました。突然、ぽっくりいかれた経験を持ってる人間には、 とても、なんとゆうか、めんどくさい漫画です。(気持ち的に。)この漫画を読んでいる自分を、斜め上から ながめている自分がいます、この漫画を読んで、感情の確認作業の様な気分に浸り、涙を流している、気持 ちの悪い自分を、ゲロ吐きながら、見つめているようです。ああ、気持ちが悪い。ぼくとつとした絵柄、喪 失感の描写、何とも言えん台詞まわし、めんどくさいです。(自分の気持ちが。)これは、漫画であって、漫画ではないような気がします。これ以外、選びたくありません。なので、選びません」。

    「マンガでここまで人の感情を表現できるのか!」

    「愛する人を失った悲しみとそれをネタにしてしまう「漫画家としての業」があやういバランスを保っている。 結果として誤解を恐れずに言うならとても良質な「エンターテインメント作品」として成立している。」

    「すばらしい、「まんが的表現」の数々。作家の業って壮絶だ。読後感は、まんがや小説ではなく、アラーキー の愛妻ヨーコシリーズを思い起こさせます。本作を選んだのは、たぶん、自分の年齢的なものもあるでしょう。 それと、1巻ものなので、来年はない、ということから。」

    「一生忘れられないマンガ。」

    「実際に愛する人を失ってしまった者の心情を、他人が理解することなど、不可能なのかもしれない。だけど も漫画家として、様々な表現のテクニックを駆使してその心情を他人に伝えようとする熱がこのマンガには ある。」

    「「最愛の人を亡くした男の、真実の物語」という手垢のついた表現では言い表せない、上野顕太郎、入魂の作品。 漫画家だけでなく「表現者」の方は誰しも全作品に心血を注いでいると思います。それでも、ひしひし伝わっ てくるこの作品に対する姿勢や覚悟のようなものは、他と異次元であると感じました。また、作者の喪失感 を追体験させてくれるような数々の表現。マンガでしかできないすばらしい表現力です。経験した本人以外 は到底書けない唯一無二の作品です。」

    「号泣でした。止まりません。上野先生が、きっとかなり心を使って生み出して下さった作品。ありがとうご ざいます。生活とそれを作ってくれる人を大切にしたいと思わせてくれました。」

    「かけがえのない大好きな人がかけてしまうなんて今はまだ気持ちを想像する事しか出来ないので実感は出来 ない。マンガを通してそれが少し伝わってきて、本当の悲しさには到底届かないけど、どうしよう、とも思っ たし、悲しいし、焦る気持ちになった。私が大好きな家族、彼氏、友達を一日、一日大事にしていこうと改めて思いました。」

    「2010 年に読んだ漫画の中で、一番胸が痛くなった作品。だから、簡単に「これ、面白いから読んでー」な んて言えるわけもなく。自分の大事な人に読んでもらえればそれでいい。だがしかし、世にでないのはもっ たいない...。そんなせめぎあいがありつつ店頭に並べていた。唯一無二の存在である妻をなくした時、男は なにをするか。新しい人を好きになる?自分も後を追う?いや、彼は「作品」という形で、妻が生きた証を 残したのだ。」

    「ここまで主観的な感覚をマンガは具現化出来るのだと驚いた。」

    「力のあるギャグ漫画家がシリアスを描いたときの底知れなさはなんなんだろう。これほど本人につらい状況 を、冷静な観察力で、甘えを感じさせずに描いている。また、徹底して自分の描写に終始していて、安易に 娘を道具として使わなかったところがよかった。」

    「愛した妻を失うということを、まっすぐに、淡々と描く。妻との日常、その突然の死、葬儀、そして彼女を 欠かせながらも娘と過ごさなければならない日々。その描写が、どのような心情に耐えながらのものか、と、 そこに気付いたときに、涙をにじませずにはいられない。」

    「『「つらい時につぶやける名前があるのは素敵なこと」とキホは言った』突然妻を喪った作者の喪失から再生、 希望への物語。上野氏の描くそれは生々しく、匂い立つような質感を持つ。読んだ人の年齢、立場によって 受け取り方は変わってくるように思う。感情を描写する時の言葉だけではなく、空間が歪むような、その場 に溶けだすような表現に同調し、錯覚を起こしそうになる。年齢を重ねるごとに、それは現実味を増してい くのかもしれない。今一度、家族はもちろん、回りで支えてくれるかけがえの無い人達への想いを改めて考 えさせられる一冊。」

    「 「友達に勧めたい」という趣旨でマンガ大賞を運営させていただいてますが、明らかに、気軽に、勧めて いい作品ではありません。しかし、自分がたいせつだ、と思うものをたいせつだと思ってくれる人が友達だ とするならば、逆に、この作品をみてなにか思う人が、友達なんだと思います。 テーマそのものの強烈さ については、私にはもう、「読んで」以外の言葉はありません。 それだけでなく、マンガの表現としても、 一カ所たりとも、手癖や怠惰で手を抜くことの出来ない、やむにやまれなさ、が、どこまでもどこまでもみ ちみちています。上野顕太郎さんが異能のギャグ漫画家としてイバラの道を歩んでいらっしゃったのは、ご 本人が望むか望まざるとはまた別の問題として、このマンガを物するためだったのでは、と思えてなりませ ん。 別次元の作品、です。」

    「「愛する人の死」作品の場合、死んだ人に話の焦点が当てられ、その美しい生涯が残されたパートナーの視 点から描かれるというのが多くあるパターンですが、この作品は逆にひたすらに残されたパートナーの話に 終始しています。絶望に陥った男が、再び立ち上がるまでの物語。劇的なドラマがある訳ではなく、結局時 が経つしかないのですが、それでも読ませる作品にする作者の力量がすごいと思います。
    嗚咽するほど泣きました。」

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