選考員コメント・1次選考
「美醜に対する深すぎるコンプレックスを起点に、人間のあらゆる業を掘り下げて描いている力作。
己の醜さへの絶望、美しい人間の傲慢さへの憎しみ、外見によって態度を変える他者への軽蔑、舞台上での恍惚...かさねが抱くあらゆる感情が突き刺さる。
絵の完成度も非常に高く、今後が楽しみで仕方がない。」
「こちらも昨年も推薦しました。3巻で少し話しの展開に不安を感じたのですが、4巻では新たな登場人物として累と対をなす野菊が現れちょっとまた面白くなりました。お互いの素性を知らず惹かれあう二人の少女が真実を知った時、やはり待っているのは破滅でしかないのでしょうか。できれば累には幸せになってもらいたいです。」
「天才的な演技ができる主人公が、舞台に立つ喜びを得る・・というと、けなげな美しいストーリーが浮かびそうだが、ここにあるのは「女の業」。
美醜問題や、邪魔者を消す、など、目的を達成するために、手段を選ばずに生きていく主人公が、いつか破滅するのか、でも破滅してほしくない、と思いながら読み進める。
主人公を悪だと言い切れないのは、やはり女だからなのか。続きが気になる作品。」
「怖いのが苦手な私ですが、表紙の美しさに負けて手に取ったら思ってたより怖くなかった!これは女性にたくさん読んでほしいなあ。手に取るきっかけの一つになるといいなと願いを込めて。あと、小説もすごいです(むしろ小説がすごい!)。」
「読みながら、その情念で本を重く感じました。やさしいところに逃げこまず、ぶれずに醜さを描ききってくれていっそすがすがしい。こういう漫画は久しぶりです。」
「相手を陥れてまでも女優の道を極めんと活躍する累の姿に、何とも言えない後ろめたいような快感がある。
コンプレックスについて触れる作品は多いけれど、より深く本質に近いところをエグッてくる作品。」
「それぞれの設定はファンタジーだけど、舞台とか、テーマがとにかく良い。
主人公が完璧な顔を(時間限定で)手に入れて、元から持つ演技の才能を発揮するのだけど、そこで感じる物悲しさというのが主人公も、またその顔をかすキャラクター(女優など)もどちらもが得なければならない。
そんな悲しみが物語全体を包んでいる。」
選考員コメント・2次選考
「禁断のテーマ、容貌の美醜による境遇の差異に取り組んだ意欲作。誰しもが抱く欲望と葛藤を巧妙な設定でえぐりだす作者の手腕は、見事である。舞台演劇を見ているかのようなテンポの良さと構図が素晴らしい。まるで「ガラスの仮面」の暗黒バージョンを見ているような興奮を感じさせる作品である。」
「今回は14点と多い中からの選出で、どれもバラエティに富んだ作品が集まってました。
その中でも、個人的にはこの作品が一番心にナイフを突き刺されたようなインパクトがあり、恐怖や人のエゴ、女性の怖さなど色々が伝わって来てぐさりと残ったので選出しました。
「人は見た目じゃない」という言葉がありますが、只どうしても第一印象というのはまず見て、それを判断する材料に
入れてしまいますよね。 実際話したりすると全く印象が変わったりもしますが。
男性も格好良くなりたいと思う事はありますが、女性の美しくなりたいという気持ちの強さには全く及ばないと思います。
最近では女性ファンが相当数を占める様になったようでメディア化などにも合いそうですね。
独特の線が太い印象的なイラストに、それに負けない骨太なストーリーで引き込まれること間違い無しです!」
「人の顔で生きるというストーリー性は圧巻。顔を借りる側と提供する側の生き方が人間性を帯びていて、作品に惹きこまれました。親と同じ生き方で生きていく累の今後の結末、少しずつわかっていく真実めいたものが気になります。」
「決してハッピーエンドには向かわないだろうと思わせるストーリー展開(むしろハッピーエンドを希望すらしますが)と現実とファンタジー感の程よいブレンド。
大好きです。
設定がファンタジーでも描かれている人物や物語に説得力があれば魔法のような話もスムーズにしみ込む。
素敵な作品。
ニナの関わり方が最後にどうなるのか気になります。」
「とにかく展開が気になって引き込まれます!」
「顔の美醜が生活に与える影響、他人に成りすます生活、考えれば考えただけ恐怖を感じずにはいられない。」
「相手を陥れてまでも女優の道を極めんと活躍する累の姿に、何とも言えない後ろめたいような快感がある。コンプレックスについて触れる作品は多いけれど、より深く本質に近いところをエグッてくる作品。」
「1~3巻までもゾクゾクしながら読んでいたのですが、新キャラ登場による4巻の緊張感たるや!ふたりの女性が背負った運命の重さに、胸がつぶれそうになります。どう考えてもハッピーエンドを迎えることが無さそうな、ドロドロしたお話が読みたい方に特におすすめします。(でも、願わくば悲しすぎる結末になりませんように・・・)」
「多分この作品の魅力はそのセリフにあるのだと思います。累とニナの言葉に込められた、追い詰められた者の持つ切迫感が、作品に強い緊張感を持たせているように感じます。決してハッピーエンドに終わるとは思われない作品ですが、累と二ナの落ちてゆく先を最後まで見たいと思います。」
「読み始めてすぐにすごい力で引き込まれる。一息つくたびに考え込んでしまう。ただただ可哀想で悲しい話だと思っていたけれどそうでもなかった。強い。」
「現代最大のタブーかもしれないこと、
美人と不美人を分けて考える事。
美人と不美人には差はない、というつもりで生きている私は、
こんなに揺るぎなく、美人と不美人にはこれだけの差がある、と
考え続けた結果を、
作家さんならでは、マンガならではの設定に落としこんで、
我々をはらはらさせ続ける。
これを読んだ後で、「心がキレイならそれでいい」なんていう常套句を
軽々しく口にすることは出来なくなるのですが、
まったく同じことなのですが、
その精神の高潔さの価値に敏感になってしまうのです。
人間の容貌の美醜の価値に、本質的に踏み込みきったこの物語、
どう、決着がつくのでしょうか。」
「恐ろしい...!
美しさへの執念、名声、地位、そして舞台への情熱
全部を手に入れることと引き換えに、
人としてのものをどんどん無くしていく累
とても恐ろしいけれど、引き込まれ
一気に読めてしまう!」
「顔が入れ替わる口紅、映画やドラマではなく舞台女優、眠り病、戸籍のないまま育てられた少女、立ちんぼで体を売って生活する、母親の過去を知る謎の男、と道具立てが全て前近代的。昭和初期の伝奇物といった趣がある。
陰湿で暗い話なのに、主人公が人ととして悩んだり迷ったりする性根の良い子で、演劇への情熱も真っ直ぐなので、読んでいて嫌な気分にならないのはすごいと思う。
主人公の顔も人として不細工というより人外の妖怪みたいなので、作中の扱いはともかく、読んでいる側としては慣れてしまえば愛嬌さえ感じ、感情移入してしまう。
偽りで塗り固めた自分を、薄氷を踏むように嘘でごまかして生きる日々は、どう考えても不幸な結末にしかならなそうなので、続きが気になって仕方がない。
読みだしたら続きが気になって止まらない漫画です。」