選考員コメント・1次選考
「昨年は二次選考に残らなかったので今年こそ!」
「ヨーロッパ貴族の豪奢すぎる暮らしと、毎日の食べものにすら困っている平民たちの侘しい暮らし。その両方が色や匂いを伴って表現されている筆致に圧倒される。
裕福さゆえに退屈している貴族と貧しさゆえに娯楽に飢えている平民のどちらもが楽しみにしている残酷な処刑を提供するサンソン一族の苦悩と成長が、心象表現を含んで描かれていて読み応えがある。
フランス革命に近づいてきて、物語が佳境に入ってきた。」
「7巻まで進んでも、圧倒的な作画とストーリーの緊張感は保たれたまま。巻数的に推薦できるのは今年で最後になりそうなので、思いっきりプッシュします。」
「細密な描写に定評がある作者が描く18世紀フランスの刺繍やレースの模様にまず目を奪われるけど、構図についても要所要所で手が止まってしまい舐めるように紙面を見ている自分に気付くこともしばしば。死刑執行の場面なども出てくるのでアニメ化などは困難だろうが、ぜひともフルカラーの愛蔵版を出して欲しい。」
「フランス革命の裏側で生きた処刑人一族を凄まじい画力でもって描き出す。その圧倒的な世界観をご堪能頂きたい!」
選考員コメント・2次選考
「もはやガラパゴス化した読者を圧倒する絵柄の進化で見るフランス革命期の絢爛とグロテスクも見どころながら、
読んでいて興味をもつのはやはり人間の心理や根源を描こうとしている点だ。
なんだか凄いものを読んでいる、という稀有な体験に目も脳も嬉し泣きする作品。読もう。」
「マンガの面白さと画力は関係ない、と思っていますが、この作品に関しては圧倒的な作画なくして語れません。人間賛歌を主軸に置きながら、キャラクターはド級のクセもの揃い。このギャップもたまらないです。」
「細密な書き込み、そしてオノマトペを使わないなど、描くにあたっていろいろなハードルを設けているはずなのにそれを様式美にまで高めてしまう圧倒的な迫力。
一次選考の時にも書きましたが、いつの日か色のついた愛蔵版で読めないかと期待してます。」
「グロテスクなだけの表現は数多ありますが、この作品のグロテスクさは、美しさを感じます。歴史の中で、その時代時代のある一面が、現代では信じられないような残虐さを持っている場合がありますが、当時の人たちもまた、そうした残虐な事が好きだったわけではなく、ただその行為を誰かがやらなければならないものとしてあったのだと思います。
この作品に出てくる人々がどのような過酷な人生を送るのか最期まで見届けたい、最後まで読みきりたいと思える作品です。」
「孤高の存在感が半端ない。漫画の革命を目の当たりにしてる感じです。」
「読むのがつらい作品。前半、あまりに残酷なシーンが続くので本当に嫌になるほど。
しかし、骨太なストーリーと美しい描写が絶品。
衝撃がいつまでも残るので、体調のすぐれない人、元気のない人には向かない。」
「昨年のお正月に友人から勧められて読み始めたのですが、その日中に全巻揃えてしまうくらいハマりました。
絵柄とか、すこしグロテスクな内容とかは人を選ぶと思うのですが、当時の生活感や耽美な感じがまた良いのです!
最新刊は序盤がどっちの方向へ行ってしまうのだろうかという、宇宙的な広がりの展開になっていて...、ちょっと(苦笑)。」
「ルイ16世をはじめフランス革命期の処刑人シャルル―アンリ・サンソンは、差別に苦しみつつ死刑廃止を目指します。処刑という行為の恐ろしさ、疎まれながらも重んじられるという二律背反に揺れる時代背景も随所に見られます。
本作品は描写が残酷ですが、だからこそ残虐な死刑はこのままでいいのか、との問いかけにも通じます。ヒトコマヒトコマ隅々まで丁寧に描かれたその美しさは、マンガ文化の愛好者には勧めずにはいられません。本作品の原作である『死刑執行人サンソン』(安達正勝著)を読むと、更に主人公の思いを感じられます。」
「とにかく、ものすごい吸引力だった。
1巻からゆっくりと物語は始まり、登場人物が増えていくに従ってどんどん密度を濃くして、読み手を巻き込んだままぐんぐんスピードを上げていく。
もし1巻だけ読んで続きをどうしようかと躊躇った人がいれば、ぜひ5巻までは読んで欲しい。この物語はそこからが本番だと思う。
ムッシュー・ド・パリとして見事な手際を見せる執行人シャルルは、自分の代で死刑執行人をなくしたいと考えているという。
そんな彼が生きているのは、もうじきマリーアントワネットが輿入れする時代のパリ。今後面白くならないわけが無い。
時代が彼らに何を要求していくのかを、今後も見続けようと思う。」
「ゴリゴリの描き込みが凄い。
「絵を眺めるだけ」のマンガにはならず、読者を引き込むフェティッシュな魅力もあるのは長所。」
「五感すべてを精緻な絵によって表現している。」
「数奇な運命の史実漫画!比喩表現もすごい!
絵がうまい!
グロさもあるので、読者によって、好みが分かれるかも」
「1巻ラストの斬首に失敗するシーンは、鮮烈で、あまりにもリアルな処刑で思わず何回も読み直してしまった。 」
「正直、絵柄で避けていた部分はあるんですが、読んでみたらかなり面白かったです!
時代物(?)を読んだ経験があまりなかったので新鮮でもありました...マリーが本当に好きです...。」
「ノミネートされなかったら絶対に読まなかった作品。
グロそう、重そう、どんよりしそう、の印象そのままの作品だけど、その根幹のストーリー、設定、思考、人間の性の描写が凄かった。
騙されたと思って読んでみて、という意味で推します。」
「読みながら、ギロチンが苦痛の少ない処刑装置として作られたことを思い出した。ベルばら世代にも読んで欲しいような、読ませたくないような......。」
「作風に慣れるまで、随分と時間を要しました。
けれど、なかなか知る機会のない内容をマンガという媒体で知ることができることは、純粋に楽しいです。
描写の細かさが、よりリアルに知識欲を満たしてくれる個性溢れる作品だと思います。」
「 フランス革命を血で染めた実在の処刑人。生涯で刎ねた首は3000個以上。それなのに本人は熱心な死刑廃止論者で、敬虔なクリスチャン......。これほどの(おいしい)ネタが、小説でも映画でもなく、マンガ作品として(しかも日本で)描かれるというのが、まずすごい。
しかも作者のチャレンジはとどまることなく、無垢な兄シャルルに異様な妹マリーをぶつけて、愛と死をめぐる物語はヒートアップ。さらにさらに、男装の処刑人マリーに従卒アンドレを配し、マリー・アントワネットに絡ませるとは......椅子から転げ落ちそうになりました。いったい、どこまで行ってしまうんだ!
正直、この賞の候補でなければ読むことはなかったでしょう。狂気すら感じさせる絵の密度は、華麗と気持ち悪さが紙一重。目をそむけたくなる描写のオンパレードも、まったくこの賞向きと思えないが、1票投じずにはおれません。この後も買い続けます。」
「圧倒的な画力と、歴史的な知識をもって描かれた漫画。
いやもう、漫画の域を超えてもはや芸術作品とも言えるほどの画力。
登場人物の心象風景と、身分制度に縛られた現実世界の重苦しい雰囲気が心に迫ってきます。
主要な登場人物以外にも民衆の息遣いが感じられて、自分がまるでこの時代のフランスに存在している気にすらなるほど。
自由とは?平等とは?そして処刑人サンソンがフランス革命のときにどんな人物になっているのか?
とにかく続きが気になります!」
「池田理代子さんの「ベルサイユのばら」、よしながふみさんの「執事の分際」「ジャックとジェラール」、萩尾望都さんの「女王マルゴ」を読んだひと、全員におすすめ。特に過去「ベルばら」で読んできた、あのひとも、このひとも、この美しきムッシュードパリの手にかけられるのかと思うと......なんという悲劇でしょう。私血にまた別のベルサイユの側面を魅せてくれます。最高に美しい画力にもうっとりです。」
「尖ったラインナップが多い今回のノミネート作品の中でも一層異世界ぶりが際立っていたと思います。引き込まれました。」