「こういう、世界観の基になる大ネタがある作品をマンガ大賞に推挙するのは正直迷ったのですが、故あって推します。『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』。『ガンダム』もので、しかも続編です。「ガンダムを知らない人には分からない」というめちゃくちゃ高いハードルがあるので、こういうマンガは作品としての純度というか、クリエイティブな部分を元ネタに少なからず依拠せざるを得ないのは確かです。――普通は!!しかし今作は普通ではなかったのです。『ガンダム』作品(しかも宇宙世紀です。正史です)としても、SFマンガとしても、男の子をワクワクさせてくれるエネルギーに満ち満ちた作品だったのです。ちょっと『ガンダム』に寄ったところから説明すると、一番最初の『機動戦士ガンダム』から脈々と続く「宇宙世紀」という世界観があります。初代『機動戦士ガンダム』が宇宙世紀〈0079年〉のお話。それから世界が広がって広がって、いま公式の2Dアニメ作品で描かれている「宇宙世紀」という暦で一番先の時代のお話が『機動戦士Vガンダム』の〈0153年〉。(海外製の実写のアレとか小説とドラマCDしか出ていないソレとかは除きました......怒らないで!)そして今作『クロスボーン・ガンダムDUST』の舞台は宇宙世紀〈0168年〉。公式で語られたもっとも未来の話から、さらに15年。だれも見た事のない『ガンダム』の最果ての物語なのです。地球圏を統べていた政府の権威は失墜し、技術は衰退し、ひとびとは貧しい暮らしを強いられる、そんな「俺たちの知っているガンダムの宇宙が、壊れ始めている世界」。そこで生きて、闘う者たちの物語なのです。ガンダム知らない人からするとポカーンかもしれないのですが何が言いたいかと言いますと、この時代設定だからこそ、深く時代情勢が考えられつつも、自由なイマジネーションで物語が描かれている=ガンダムというクビキから解き放たれた作品である!これが今作を賞に推挙した大きな理由です。「ガンダム」ではなく、様々なモビルスーツ(おおきなロボットのことです。念のため)の使える部品を寄せ集めて作ったツギハギ機体・通称「アンカー」。そのアンカーを駆る、闘う運送業者の主人公・アッシュが、強い意志をもった少女・レオを助けるところから物語が始まります。どうやらアッシュの人柄や腕っぷしを見込んだ人々の思惑に巻き込まれていきそうな雰囲気が漂っているのですが、この壊れていく世界で、誰が何をしようとしているのか。レオとの出会いで、アッシュの生き方がどう変わっていくのか。しるべを外された世界での、ボーイミーツガール的な巨大ロボット冒険活劇。どうですコレ、ワクワクしません??余談ではありますが、今作では「ガンダム」というのは都市伝説のようなものになっていて、ロボットに「ガンダム」みたいな顔を付けるのが強そうだから流行ってる、くらいのものという扱いです。「ガンダム」という名前なんぞ、大した問題ではないという長谷川裕一先生の、この作品における意思表示のように思ってしまうのは考え過ぎですかね?ガンダムを知らなくったって、面白いもんは面白いはず!さあ、このマンガでワクワクしよう!!」