選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2017大賞作品

『響~小説家になる方法~』柳本光晴

  • 響~小説家になる方法~ 5 (BIG COMIC SUPERIOR)

  • 選考員コメント・1次選考

    「こ、この娘さん、すっごい!読んで思ったのは小説の天才という部分もすっごいのですが我が道を行く、というかその道を彼女が気分よくドライブしてるのに邪魔しちゃうと大変なことになっちゃうところもすっごいというか爽快というかちょっとやりすぎじゃない?と心配しちゃうところもすべて魅力なのです。好き。」

    「んな馬鹿な!と思いながらも、楽しく気持ちよく読ませてもらっています。ついつい続きが気になる展開がにくい」

    「天才とは如何なるものか、言語化が難しいその問いの答えを、主人公の言動で表そうとしている力作。」

    「主人公の女子高生は小柄でメガネで小説好き。ただし、その思考や行動は、世の中の常識とはかけ離れている。世の常識をひっくり返すほどの圧倒的な才能、無軌道な振る舞いには憧れすら覚える。およそ素直とは言えないながらも、時折見せる可愛らしい仕草や表情も魅力的。主人公を含め、主要キャラに微妙にイラつく要素を散りばめながらも、実は全キャラクターが善良という心配り(?)も読んでいて心地いい。」

    「"早熟の天才少女というキャラ付けのバリエーションは古今東西あまた存在するが、ナチュラルに暴力的という設定は斬新だ。
    しかもそれが権威主義の文壇連中を狼狽させ、逆に彼女に惹き込まれるキーになっているのも面白い。
    そして主人公・響があくまで小説を愛し、真摯に向き合う姿勢がぶれないのが何とも素敵だ。"」

    「巻を追うごとにテンションが上がっていて、とにかく固唾を飲んで見守っている作品。響というキャラクターがあまりに強烈すぎて、読んでるこっちまで彼女の"まともじゃない"行動に憧れるファンになっちゃうのが困りものです。純文学というテーマを、こんなに面白いマンガにできちゃうなんて本当にびっくり。」

    選考員コメント・2次選考

    「タイトルから、『小説の書き方』的な内容だと思って読んだら違った。主人公は実際目の前にいたらとても近づきたくない、少し風変りな人物だが、キャラクターとしては魅力的で、巻を追うごとにおもしろくなる。実際一気に読んでしまった。過去に大学ノートなんかにひっそり小説を書いたことがある人は古傷をえぐられ、そうでない人も物語として楽しめる、読む人を選ばない作品。」

    「なにかとんでもないことが起こってる!リアルタイムでこの興奮を味わえる幸せをかみしめながら読んでます。そもそも、「ひとりの才能が世界を変える」っていうダイナミズムは、マンガの醍醐味中の醍醐味!演劇、バレエ、クラシック......そんな舞台で天才を描いてきた数々の名作マンガと同じ、日常をゆるがす圧倒的な熱気を感じます。ただそれだけじゃ済まないのが、本作の舞台が文芸界だってこと。なんたって小説は自分を世界にさらけ出す「自己表現」のカタマリですから、お手本も正解もない。そんな世界だからこそ、「書くこと」をめぐる躊躇ない価値観のやりとりにぞくぞくします。いやその実、主人公・響をヒーローのようにただ憧れてみてるだけなんですけど(ファン心理って怖い!)。そのなかでヒーローではない、「ただ純粋に小説が好き」な同級生かよちゃんのエピソードも好きなんですが、これを苦悩するプロ作家たちの話に差し挟んでくるところがまた怖いんです。ああ小説を書くってどういうことなんだろう?」

    「見た目はおとなしそうな女の子だが、そこからは想像できない行動や言動に驚かされます。そこから出てくる才能にあふれた小説を書くといった極端な違いに惹かれます。あそこまで一気に直木賞・芥川賞までとってしまうのはありえないだろうと思う所だが、どこまで行けるのかなと期待させてくれるのが面白い。今後どうなってしまうのかと次の巻が楽しみな作品です。」

    「15歳の天才新人小説家の鮎喰響が、様々な大人たちや文学部の友だちと真正面から向き合って影響を与えていくお話し。「響自身はかわるのかな。」と読み進めていきますが、気に入らないと本棚倒すし、すぐ足が出るし...(笑)ですが、一度話して(蹴飛ばして)理解した相手には真摯に批評をする。話を聞く。ここも変わらずで読んでて気持ちがいいです。 あとは、だいぶ気持ちの悪い涼太郎に幸せになってもらいたい。がんばれ!涼太郎!」

    「小説家になるためのハウツー本なのか、なんなのか...?と思いながら読み始めたらこれまた大間違い!なんでしょう、非常にスカっとする!!面白い。なんでこんな小説だけが好きな女の子がこんなに腕っぷしが強いのかとか疑問はあるけれど、とにかくスカっとする。普段腹が立ってもここまで出来ないということを響はけろっとやってのける。響がこれから文学界にどんな波乱を巻き起こすのか目が離せない」

    「主人公の強烈な性格に、一巻を読んでからちょっと腰を引いていたのだけれど、今回ノミネートされたことで一気に読んで、驚いた。例えば音楽をテーマにした作品において、いかに主人公が優れた演奏者なのかを描き出す時「画面から聴こえないはずの音が聴こえてくる」感じが伝わってくることがある。『響』の場合、主人公の書いた作品の内容が描かれていないのにも関わらず、圧倒的なものとして伝わってくる。周囲の人間の反応を描くことで、主人公のずば抜けた才能が光り輝く。そのことにものすごく驚いた。そして芥川賞や直木賞をめぐる戦いが、こんなにも面白く描かれるとは。マンガにできることって、まだまだたくさんあるんだな。そんな気持ちになりました。この機会をくれたマンガ大賞にも感謝したい。薦められて読んで面白いって、すごいことだ!」

    「読んでいて楽しかったです。どのキャラクターのことも好きになる。桔梗さんは絶対幸せな結婚できる人だから幸せになってほしい、って思って泣きました。この漫画は小説を書いている人たちの話なんですが、大体のことは暴力で解決(?)していて、ダメなことなんですけど何だかもう清々しかったです。悪いことする奴にはとにかく暴力。暴力が一番強い。この漫画はバトル漫画かもしれない。どんなに嫌な奴も、響(ヒロイン)が振るう暴力で(?)心を入れ替えて(?)愛すべきキャラクターへ...??文系なのに拳で分かり合う...???暴力はペンより強し...????文系のヒロインが暴力で世界を変える青春バトル漫画?????これからも目が離せません。」

    「○○賞しか話題にならない小説界の戯画化と思えるが、その錆びついた価値観を、天才少女・響がどう壊すのか(色々な意味で)、ますます目が離せない。」

    「自分が壊されてしまいそうなほど圧倒的な才能が目の前を突き進んでいく。何かに真っ直ぐであるだけでこんなにも近寄りがたくて優しい。」

    「ある意味、純粋で自分の信じる正義を貫き、自分の歩く道に障害があれば排除する。悪く言えば「頭がおかしい」のですがそんな常軌を逸した「天才」の彼女から目が離せず、これから作る彼女の世界を観れるかと思うとうれしくてたまりません。常人とは違う彼女の世界を多くの方にも体験してほしいと切に願います。」

    「最初のワルい人達が出てきた時、んん?と思いましたが、段々引き込まれて行きました。」

    「響のキャラクターに惹きつけられました。今後の展開が気になります。」

    「一人の天才の描き方が秀逸ではあるものの、その天才を囲む人物達も非常に魅力的。ストーリー上、空間的・時間的には大きな展開はないものの、それでも静かに淡々と天才が周囲に影響を与えていく流れは必見。」

    「読もう読もうと思っていたのに手を出していなかった作品。マンガ大賞選考に参加していてよかった!この作品に出会えてよかった!響が普通でなければないほど、世間とズレていればいるほど、彼女が天才である、ということが伝わってくる。天才って生きにくいんじゃないかな、と思うこともあるけれど響の絶対にぶれない芯の通った姿をみるとそんな考えも吹っ飛んでしまう。すがすがしいですね。ここまで圧倒的に力の差があると嫉妬みたいなネガティブな感情って湧いてこないのかもしれない。響に出会った周りの人々が刺激されて変わっていく姿も気持ちがいい。響の書いた小説がどんな作品なのか・・・。読み手ひとりひとりの脳内でそれぞれに妄想されている世界観も覗いてみたいです。」

    「天才の才能自体ではなくてむしろ一般的な天才観、救世主願望的な天才待望論の危うさを描いているように読めるところがいいです。とにかくヒキが強い作品ですが、新人賞の選評とかの業界的にそれっぽい細部の描写が個人的にツボに入りました。」

    「不器用ながらも自らの価値観や信念に従って正直に生きる天才「響」の姿はとても人間臭く、不思議と身近に感じることができる。だからこそ常識にとらわれない彼女の豪快な行動や発言はとても痛快。主人公の響が天賦の才を持つ人間として見事に描かれている一方、持たざる者にとって彼女の才能がどれだけ残酷かという部分にもしっかり触れられており、「才能」というものについて深く考えさせられる作品。」

    「最新の5巻を手に入れるために都内をあちこち探し回った。どこも5巻だけ売り切れだったので。高田馬場の書店の小学館のコーナーで高校生男子のふたり組が4巻を手にして「これ知ってる? 小説家になる話なんだけど」とか要領を得ない話をしていて、ひとりは「ふーん」と興味ない様子だった。タイトルも題材も地味だし仕方ないかなと心中苦笑い。5巻は次の日に新宿でようやく手に入れたのだけれど、それにしても4巻を読み終えてからの何日間かが長かったこと。無名の高校一年生、鮎喰響が文学賞に投稿した小説が、小説そのものの力のみで社会現象を引き起こしていく。その作品「お伽の庭」は作中、まとまった文章としては提示されない。せいぜい登場人物の口を介してプロットの断片と感想が語られる程度だ。提示されないまま、文壇の大御所からラノベ好きの女子高生まで、あらゆる人に「凄い」と言わしめる。主人公である響はそんな別格の、まさに神がかった作品を生み出した類まれな才能として描かれる。それでいて弱冠15歳の女子高生なので、周囲にあふれる凡庸な小説とそれを書いた大人の小説家、俗物的な文壇を断罪するのが許される。しがらみに絡み取られて誰もが言いたくても言えないことをばっさり言い切る響の行動には、それゆえ妙なカタストロフィーを感じる。加えて、地味なメガネの文系女子っぽい容貌でありながら、世間的な常識からすればサイコパスすれすれ、洒落にならない暴力性を隠そうともしない響の存在感がなにしろとてつもない。某テーマパークのランドマークの某城をバックに振り返る目ヂカラの凄味たるや・・・。要所要所でつぶやく決め台詞には「正義の味方」のようなあやうい分かりやすさがある。無垢、無意識な天才が並み居る凡才を(必然的に)蹴散らし、出るべくして世の中に出ていく過程を綴るシンプルな骨格は、若きジャズサックス奏者が主人公で同じ小学館刊行の「BLUE GIANT」に通じる既視感がなきにしもあらずだし、作画も自分の好みとは違うところがあるのだけれど、最強のキャラクター造形がそんな「重箱の隅突き」を打ち砕く。迎合したり距離を置いたり、どっぷり同化したり拒絶したりしつつも、どこかで仕方なくそれ(=社会)を意識して生きざるを得ない大人のしょうもなさ、打算、計算に、ゴスロリ服で臨んだ授賞式でパイプ椅子を振りかざして殴りかかる。そんなあられもないパンクな暴力性こそが、不思議に爽快な読後感の正体のように思う。マンガ的なお作法に照らした時の細かい違和感はこの際置いて、ぐいぐい引き込む破天荒の行く先をあっけに取られて味わいたい。」

    「今回のラインナップのなかで「イッキ読み度」は個人的に一番高かったです。主人公・響の強烈なキャラクターだけでなく、傑出した天才の対比としての「凡人(=人間)」の描き方も読みどころ。女の子はみんなかわいいし、青春部活モノとしても楽しめるなど、一見親しみやすい作りですが、読み進めるうちに色々な方向から考えさせられました。」

    「ヒロインの響の造形が魅力的。斜陽の文芸業界を舞台にしつつも、ここでしか息ができない人間もいるのだと思い知る。」

    「出版界隈のしがらみを才能だけでブン殴って(稀に物理攻撃)こじ開けていくという。フィクションに求められる爽快感と主人公の行動から目が離せない「何をやらかすか」という期待感が凄く、目の離せなさでは随一かと。また絶対に眼鏡を外さないタイプのヒロインであることを加味いたしますと大賞に推すべきかどうか最後まで悩みに悩んだ作品でした。」

    「冷静に見ると好きになれない主人公なんですけど、話は文句なしに面白い!」

    「この漫画を読んでいると、改めて「小説」を読みたくなる!ぶっ飛んでいる「才能」、急募!ですね。」

    「「小説家になる方法」とあるものの、実際に方法が描かれてるわけではなく、ひたすら響ちゃん無双物語。というわけでエキセントリックな響のキャラを楽しめるかどうかが、本作の一番のポイントかと思います。自分は楽しめました。」

    「小説家を目指す天才女子高生・・・でも、天才ゆえの「やらかしちゃってる感」がたまらない。文豪にはこうしたズレた感じが必要条件なのでしょうか。ときに等身大の高校1年生、しかし社会を変えるコトバを持っています。最近、身近なところで社会を変える強いコトバに出会ったので、とてもしっくり来ます。」

    「危ういくらいにストレートな主人公の響に痺れます。腹を立てた時の危うい行動を、至極真っ当な反応のように感じるのは何故なんでしょうか。」

    「はっきり言って、主人公の響ちゃんのことは好きになれません。だって才能もあって可愛くて運も良くて、それなのに性格が悪すぎる!ムカつく!のですが、そんな性格極悪な彼女の、純粋さ・真っすぐさに思わずハッとさせられ、彼女の生み出す作品を読んでみたくてたまらなくさせられてしまったのが悔しい...。」

    「主人公、響の人格にハラハラさせられながら、読みました。「あぶない子?」だけど、独自の正義で道を切り拓く姿に爽快感あり。」

    「ミスリードに継ぐミスリード! 全然先が読めません。「女子高生が純文学を書く話をマンガで描く」という構造を取っているのがまず冒険だしアイディアがある。マンガにも、これが小説だったら純文系と分類されるだろうなと感じる純漫系とでもいうような作風の作家さんはいらっしゃるわけですが、この作者は完璧にエンタメ。作風としては、わかりやすい例えでいえば、ガラスの仮面的といえばいいでしょうか。漫画がうまい。純文学をエンタメ漫画で描くおもしろさは、たぶん、漫画編集者の黎明期、文学編集者との確執とかライバル意識とかをよくご存知のかたは、もっとこの「おかしみ」が深く味わえるんじゃないかな?と想像。いまのところ、肝心の小説をまったく読ませずに、読者に漫画をぐいぐい読ませるところにも柳本光晴先生の力量を感じました。」

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