選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2017ノミネート作品

『波よ聞いてくれ』沙村広明

  • 波よ聞いてくれ(3) (アフタヌーンKC)

  • 選考員コメント・1次選考

    「セリフ回しのテンポが素晴らしく、読んでいてとにかく笑える。主人公の鼓田ミナレのキャラの立ちっぷりが素晴らしい!キレッキレです。」

    「ひょんなことからラジオパーソナリティーになった女性が主人公のマンガです。このマンガの一番の魅力は主人公のトークです。軽妙でテンポがよく、笑わせてくれるし、上品すぎず、下品すぎず、セリフのやり取りだけでもとても面白いのに、超絶美麗な絵と、たまに入る格闘マンガとも思えるような素晴らしいアクション。さらに人物紹介とか細かいところに小ネタを挟んできたり。まさにマンガの醍醐味盛りだくさんって感じのマンガです。この主人公が現実にラジオやってたら絶対面白いだろうなぁ。是非聞いてみたい。」

    「ニッチなストーリーなのに、謎のスケール感。謎の臨場感。さすが、沙村先生。」

    「最初読んだときは、ラジオのマンガ?って正直思いました。とりあえず、沙村さんだし読んでみようかなぁ?程度で。すいません。面白いマンガここにありました。テンポよく進んでいく話と、所々というか全体的に入ってるギャグ。
    こんなに絵が上手くて、話の幅が、「無限の住人」からラジオまでって。沙村さんとりあえず読んで入れば間違いないが実証された瞬間でした。」

    「2年連続で推します。たいへんクレイジーな作品で、この面白さ、クレイジーさが、何かの間違いで世の中に流行れ! 事故のように多くの人をひきはねろ! とは思い続けているので、何かの間違いで流行ればいい。たぶん、このマンガは世の中がどうでもいい方向に豊穣であることの証なんですよ。よく知らないですけど。」

    「1巻第1話が凄すぎたので大丈夫かな、と思っていたのですが無用な心配でした。留まることのない勢いとパワーにはただただ舌を巻くばかり。
    周囲のキャラも立ってきてより一層続きが気になる作品です。」

    「今年いちばん繰り返し読んだマンガかも。立て板に水のトークが"聞こえてくる"マンガ。マンガという音の出ないメディアで、これだけ声が聞こえてくるってすごい。」

    選考員コメント・2次選考

    「圧倒的情報量を圧倒的画力で圧倒的にくだらない最高の漫画。」

    「主人公の鼓田ミナレの喋りと、テンポの良さ、そしてテンションの高さがしっかりかみ合って、読者側もどんどんハイスピードで読まされます。あっという間に作中に引き込まれる感覚がスゴイ!」

    「今回の候補作すべて読んでみて、やっぱり自分は「楽しいマンガ」が読みたいと思った。スリリングとかダークとかシリアスよりも、楽しいマンガ。それでいうと、迷うことなく本作が1位。ミナレ最高。」

    「掛け合いの妙とか、愛すべきダメ人間たちの模様とか、ライトサイド(?)沙村マンガの魅力をカレー皿に山盛りに盛り付けたみたいな印象を持ちました。予想外のことが起きまくる展開に、いやコレどーすんの、どーなんの、と不安になるけれども、キレッキレのセリフの応酬に翻弄されて、気づけばどんどん読み進めているという、不思議な読書体験。材料は不明、されど味付け濃い目でクセになるマンガです。」

    「すごい。世界のことごとくが、悪意とまでは言わないまでも、居心地の悪い感じにはしてやろうぐらいは絶対に思っている感、世界は底意地の悪さに支えられている感がすごい。世界のことごとくは信じるに値しないけど、世界が自分に向けてくる底意地の悪さは掛け値なしに信じられる、という「逆張りの信頼」をもって、僕たちは強く生きていこう的な。そういうマンガ。たぶん。」

    「飲み屋で愚痴をこぼした相手がラジオ局員で、あれよあれよという間にラジオの世界へ...。この物語のポイントはなんといっても予想外の脱線。脱線に脱線を重ねて、もういっそ線路なんかいらねえよ!って感じでオフロード走行をしているディーゼル機関車を見ているような気分になります。電柱をなぎ倒し、線路のない荒野を走り続けるディーゼル機関車が浮かびます。それと、これでもかってくらい詰め込まれている小ネタの数々。わたしにはおそらく把握できていないのもあるはずだから相当な数にのぼるんだろうけど、それがまた絶妙なんです。そこもポイントです。」

    「独自のセンスに貫かれた濃厚な業界コメディ。ギャグとキャラクターは目を惹くが、伏線やプロットの巧さにも留意したい。」

    「ぶわ~~んとジェットコースターのようなノリがたまらないオトナ漫画!キッレキレのミナレさん最高です。テンポのいい会話も最高。面白いからこれぜひ読んでくれっておすすめしたい漫画。」

    「正直第一話がピークになってしまうんじゃないかと思っていました。杞憂でした。二巻第九話の展開に震え、その後も衰えない勢いにわくわくさせられています。まだまだ先が楽しみだし、もっともっと多くの人に読んでもらいたい作品です。」

    「とにかくミナレさんはみっともなくてジタバタしててアドリブ効いてて最高だ。今一番清水富美加にすすめてあげたいマンガだ。なんとなく。」

    「全員素人でドラマ化してくれ!」

    「この漫画は大人向けだと思うのですが、マンガ大賞を参考にする方たちは結構年齢層高いと思っているので投票しちゃいます。沙村さんのいつもの軽妙なトークと元ネタが分かるか分かんないかギリギリなギャグが心地いい笑いを誘ってくれます。沙村広明作品の幕の内弁当感ありますよねー。っていうか、大賞とってお見かけしたい!!ぶっちゃけその一心」

    「今となってはテレビのワイドショーでも普通に取り上げられるようになった長編アニメーション映画『この世界の片隅に』だけれど、最初のころは劇場に長蛇の列が出来て連日満席とか、クラウドファンディングで3000人が4000万円近くを出資したことでようやく製作が始まったといったトピックをてこに取り上げようとする民放のテレビ局もなく、そしてもちろん主演の声優が誰かを挙げて取り上げる民放のテレビ局は現時点でもなかなかキー局では見受けられない状況にあって、ラジオは最初のうちから積極的に作品を取り上げ、片渕須直監督にも出演してもらってその中で主演の声優が誰でどういった演技を見せて、それがどれだけ素晴らしかったかをしっかりと伝えていた。 芸能界とのしがらみがない訳ではないけれど、それでもどこか独立独歩を貫けるのはそうしたゲリラ的マインドが未だに残っているからってことと、そして芸能界がしがらみを押しつけたがるような利権がもはやラジオという媒体には残っていないからってこと、なのかもしれない。番組的には自由で冒険も出来て素晴らしい。けれども経営的には広告収入が減って大物感をもった番組が作れず厳しい。そんな両極に足を乗せているからこそ、ラジオは映画『この世界の片隅に』をどこに憚ることもなく取り上げられたし、まるで知らないカレー屋の女性店員を起用して深夜早朝にフリーで話させる番組も作れるのかもしれない。 そんな番組がどこにある? というのはだから沙村広明の『波よ聞いてくれ』(講談社)という漫画の中の話。鼓田ミナレという25歳の女性の弁舌に目を付けたか耳を懸けたFMラジオのディレクターがいて、DJとして引っ張り破天荒にも真夜中の番組をまるまる任せることにする。スポンサーなしの番組は何をやろうとも自由だけれど、ただのカレー屋の店員に過ぎなかったミナレは何をしたら良いのか分からない。とはいえカレー屋の方も首になりかかっていてラジオDJでも何でもいいから稼がなくちゃいけないと、覚悟を決めて始めた番組で男に騙された話をネタに架空の実況を行って世間を驚かせ、そして今度は生でラジオのドラマを流してやっぱり世間を仰天させる。 マイナーな地方のFMラジオ局がスポンサーもつかない真夜中に流した番組だから大騒ぎになるといったことはないけれど、聞いた人には何かが残る番組になっていた様子。それがミナレの出たとこ勝負で立て板に水と喋って繋げる才能ゆえか、それとも彼女を見いだし課題を与えて追い詰め才能を引っ張り出したラジオディレクターの企みゆえか、まだ分からないけれどもここには何かある、そして絶対に何かやってくれると思わされる。今はもちろん漫画の中のフィクションに過ぎないけれど、これを読んだ意慾のあるパーソナリティなり、状況を浮いているラジオ局なりが真似て破天荒な番組作りに乗り出せば、どこか行き詰まってしまった状況も打破されてラジオの"復権"もあるのかもしれない。ないかもしれない。どっちなんだ。生のドラマで使われる効果音がその場でさまざまな道具を使って出される描写は、話には聞いていても改めて見せられるとなかなかに面白い。ベニヤ板をバリバリと引き裂いて雷の音を出すとか、本当にやられていたことなのか。そして本当にそうした音が出るのか。『波よ聞いてくれ』が実写ドラマ化された暁には、是非に再現してもらいたいもの。というよりこの面白さは、いずれ絶対に映像化されてしかるべき。同じ作者の『無限の住人』も良いけれど、コミカルな味の中に人間の深いドラマも滲んだこの漫画を、大勢に読んでもらってそして映像化へと向かって欲しいと願いこうして推薦する。主演は誰が良いかなあ。破天荒で才能もあってだらしないところもある鼓田ミナレを演じられる女優なんているのかなあ。」

    「小ネタとテンポが素晴らしい、1巻からの伏線を丁寧に回収しつつまた新たな伏線を仕掛けてくる緻密な構成、今後も面白い展開になっていくのか...とても楽しみです。」

    「作者あとがき曰く「無軌道オカルトカレーラジオ漫画」。確かにその通り、闇鍋のようなカオスな漫画です。とにかくハイテンションの勢いのままに、深いんだか行き当たりばったりなんだか分からない物語展開。なのに、非常に面白い。高い画力と非凡なネームセンスによる天才の技としか言いようがない作品です。」

    「巻を追うにつれ、ユーモアの威力が増している。次巻は一体どうなってしまうのか。楽しみすぎる。」

    「実に面白い!!!どう転がるのか、先が気になって仕方ない漫画。キャラがとにかく全員ユニークだし、何より会話のテンポの良さが好きです。」

    「特別な設定がなくても、突飛なアクションがなくてもマンガってこんなに面白いんだと目から鱗。相変わらずカッコイイ、カッコ良すぎる絵で笑わせにくるんだもんなぁ...セリフ回しホント好きです。油断してると口まねしてしまうくらいに。」

    「作者の本領は『ベアゲルター』の方じゃないの?と一瞬思ったが、考えてみれば、これほど対極的な話を同じ絵で描けるのはスゴイこと。北海道のローカル局、主人公が新人女子でヘンな性格という点では『チャンネルはそのまま!』を連想するが、テレビより絵的に見せ場の少ないラジオ業界を舞台にして、これほど面白くするのだから感心するしかない。沙村作品の魅力が過激アクションだけでなく「セリフ」であり「間」であることを再認識した。この1票を天国の永六輔に捧げたい。」

    「何の漫画なの、って聞かれたら笑顔で「わかりません!」というしかない。説明してもいいんだけど、多分読んだ方が早いよ。めっちゃくちゃ面白いよ。」

    「「ブラッドハーレーの馬車」のような作品も描く作者のバイタリティに驚きです。また、色んなネタがちりばめられているので一コマ一コマ注意深く読んでいます。主人公のミナレ姉さんの喋りは中毒性があり、ずっと聞いていたいですし、こんなに不幸な目にあってほしいと思える女性主人公もあまりいない気がします。」

    「沙村さんの女性を描くうまさが凝縮している作品。こういう「よくしゃべる系」の作品は、言葉の使い方のセンスとか時代性がちょっとでもずれているとものすごく気になってしまって、すぐにアウトになると思うのだが、ミナレのセリフにはまったくずれがない...どころか痛快。「男性マンガ家で女性キャラを描くのがうまい人選手権」をやったら、沙村さんは優勝候補だと思う。」

    「「昭和のラジオ」が持っていた親しさといかがわしさと、哀愁みたいなものを全部まとめてギュッと凝縮させたような作品です。登場人物が一筋縄ではいかなさそうな人ばかりなところにも惹かれます。いちばん気になるのは、どう見ても剣客か遊女の「城華マキエ」。脇役とは思えない影の濃さで、主人公に絡んでいくのか案外、そうでもないのか、まったく予想がつかないところも大好きです。」

    「相変わらず会話劇が上手い。ニヤリと笑わせてくれます。」

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