選考員コメント・1次選考
「待っていた・・再開を待っていたぞ・・!とついに新刊のニュースを拳を突き上げて喜んだ本作。
あんなにもゲーム愛にあふれた作者が、いろいろ権利の問題とかいろいろ・・の問題を乗り越えて、いつか、問題が解決したときに
それでもゲーム愛をつらぬいた作品を書き続けてくれるのかとても心配していた。
が、心配ご無用の面白さにあふれた新刊であった。
世間は真田丸ロスやら逃げ恥ロスやら大騒ぎだが、私は去年の5月まで、長い間ハイスコアガールロスであった。
日高派なのか、大野派なのか。ハルオ派なのか。むしろハルオの母派なのか。
ゲーセンの魅力を伝える本作は、ゲームっ子ムネアツの要素がもりだくさんなだけでなく、ちょっと世代がはずれてもゲームファンなら絶対楽しめるこの熱量。スマホゲーやPSPを一度やめて、ゲーセンに行ってみたくなる。
そして、ハルオをめぐる大野と日高の恋模様。逃げ恥もムズキュンだったけど、ハルオと大野もかなりのじれったさとキュンに溢れている。
応援の強い気持ちをこめて、再度推したい。」
「時代を彩った往年の名作格闘ゲームにのめりこむ主人公を軸とした青春マンガです。ゲームへの愛が強く表れていて、そのゲームを知っている人が読んだらニヤリとしてしまうような小ネタがたくさんちりばめられています。このマンガの魅力の一つは格闘ゲームであるのは確かなのですが、格闘ゲームと同じかそれ以上に、恋愛要素が素晴らしいのです。なかなか想いを伝えられなかったり、すれ違ったりといった純愛マンガ要素が、格闘ゲームの熱い戦いの中にちりばめられて展開するので、やきもきしながらも、熱く激しい印象がとても新鮮。戦いの純愛マンガとでもいいましょうか。今までにない感覚のマンガです。かつて格闘ゲームにのめりこんだ大人はもちろん、格闘ゲームを体験したことがない若い世代でも十分に楽しめるマンガです。」
「1990年代のゲームセンターという、一般的にはマニアックでモノセクシャルな印象の世界を舞台としつつ、圧倒的にせつなく、笑ってもらい泣きできる10代男女のラブコメディー、ラブストーリー。気の毒ないきさつで2014年に連載中断となったが、15年に再開。小学生の出会いから中学、高校と過ごしてきた少年少女は、直接交わす言葉は少なくとも、ゲームの世界に仮託して深くコミュニケーションを重ね、相手を大切に大事に思う気持ちを育ててきた。そんな、同じ1年でも大人のそれとは比べ物にならない長い長い時間の流れを丹念に追う本作品の「やさしさ」は、連載再開後も全く変わらない。晶へのハルオの敬意とやさしさ、ハルオへの日高の一途、そしてハルオへの晶のシンパシーとかけがえなさ。16年夏には久々の単行本6巻が発売され、これを書いている翌週には7巻が発売予定。中断・再開の経緯では様々に大人の事情も展開されたのだろうけれど、もう続きは読めないものと思っていたので、まずはめでたや。」
「ようやく発売された6巻。期待を裏切ることなく、グッときました。独特の甘酸っぱさが、心に響きます。」
「いやもう、戻ってきてくれてありがとう!の気持ちだけです。また続きが読めるようになって本当に嬉しい。カバーの裏が旧デザインだったのもすごく嬉しい。大野は変わらず可愛いし、著者が描き続けることを選んでくれたことに感謝したい。もう、とにかくオススメ!」
「復活してよかった。この先も楽しみでしかない。」
選考員コメント・2次選考
「このマンガに入れ込む理由を3つ考えてみた。1つはキャラクターの魅力だ。少年マンガの主人公としてハルオは何しろ「かっこいい」。真っ直ぐ真摯に自分の信じる道に対峙し、そこで頭角を現す実力もセンスもある。自らこれと決めた好きな世界に生きる者の必然として、周囲には分け隔てなく寛容で懐深い。それでいて(当たり前だが)男の子っぽいひたむきさがある。その情熱の向かう先はゲームというマニアックな世界ではあるのだけれど、これは女子がほっとかないでしょう。そう思わせる求心力がある。むしろ暗くてオタクなゲーム少年という先入観があるからこそいっそう、そのギャップに引き込まれるのだ。2つめは絵の力。一見すると好き嫌いが分かれそうな個性的な画風なんだけど、その実、好感度の高いかわいく素直な絵柄なのだ。それはとりわけ女子の描きぶりに顕著で、上気した頬、潤んだ瞳、もの言いたげな唇と、情報量の多い作画の術に期せずして読み手は心をつかまれる。さらに3つめには(意外にも)少年マンガの王道を行く伏線豊かなストーリーを挙げたい。自転車の後ろに大野を乗せて理想のゲーセンを探す小さな冒険の旅に出る小学生の夏休み。途中駅で日高と2人置き去りにされる中学の修学旅行。大野と一緒に居たい一心で一念発起、ゲームを封印して臨む高校受験。日高と夜明かしした朝に大野と鉢合わせする渋谷の街頭・・・。書いてみれば3点とも人気作品に当たり前の条件のようだが、それがスポーツでも音楽でもなく、むしろゲームだからこそ際立つ妙味。それがこのマンガの力なのだろう。付け加えると、ハイスコアガールには現実社会との絶妙なシンクロ具合が醸すリアリティーを感じる。1990年代の(今に比べるとまだまだ)のんびりのびのびしていた時代の、活気も話題性も社会的関心も今とは比べ物にならないほどに高いゲームの世界が舞台となることで、当時それに何がしかの接点があった人はもちろん、ゲーム業界に特段のかかわりがなかった人でさえ「ああ格ゲーね」とか頷くことができる。いかにもありそうなボーイ・ミーツ・ガールの物語として、その舞台設定を受け止めることができるのだ。実際は憧れのエピソードで綴るファンタジーだとしても。ありそうでなかった「濃い」読み応えのラブコメで、じっくり楽しめます。」
「1次選考とほぼ同じタイミングで、最新刊が発売。まったく魅力は変わらない。面白かった。ワクワク感はとまらなかった。いろいろあって長いことハイスコアガールロスだったけど、ついに復活。私の中ではすでに殿堂入りのこの作品を、今こそ再度推したい。ハイスコアガールの魅力★ゲームが好きじゃなくても、ゲーム好きの男の姿を見て、きっと共感すること間違いなし!主人公ハルオの魅力。それはつきぬけたゲーム愛。母性本能をくすぐられる、不器用さ。そしてツッコミ力。読めばハルオと友達になりたくなり、ハルオのディープなゲームの世界を教えてほしくなる。★ムズキュン?ワラキュン!逃げ恥のブームでムズキュンという言葉がはやっていたが、ハイスコアガールのキュン力も負けてはいない。ハルオの不器用な気持ちもキュンだし、ヒロイン大野さんのハルオへの一途さもキュンだし、日高のかわいくて意地っ張りだけど意外に大胆なところも大いにキュンである。これはやばい。キュンのてんこもり。そしてちょっと笑える。ワラワラキュンキュンである。★癒し力昨今流行のただの血みどろ理不尽殺人エンタテインメントや、ドロドロ展開てんこもりとは違う、この癒し力!疲れた大人を童心に戻し、疲れていない若者は、純粋な恋心を思い出し、スマホゲームに興味がない、据え置きゲーム愛の強い大人には、共感をもたらす。このマンガを本棚において、疲れるたびに手に取っている。一度、長い期間おやすみをしていて、心配していたけど、新刊もやっぱり面白かった、ハイスコアガールが私の1位です。 」
「年齢だろね。あの頃燃えたものを思い出してしまいますよ。そして、買っちゃったよファミコン。いけないよ。余計な出費および無駄な時間をつかってるよ。それが幸せだよ。」
「ゲームセンターで小銭を筐体に積んでいた思い出のある方、恋愛に無頓着な学生時代を過ごしていた方には是非読んでいただきたい作品。恋愛よりもゲームのことしか頭にない男子が、いつしか恋に気づいていく過程の描き方は秀逸。恋を後押しするゲーム上のキャラクター達がめちゃめちゃ懐かしい。90年代にタイムスリップした感覚を得られる漫画、ゲーマーにとってはノスタルジー溢れる作品である。作者にいろいろな事情があって作品発表が中断していたが、トラブルを乗り越えて中断後に発行された新巻には、待ちに待ったハルオと小春の三連戦が描かれる!小春の想いを乗せた右京、ルガール、フォボス!気持を込めた小春の攻撃に対して、純粋にゲームを楽しむハルオ。対戦結果は‥‥‥、過去最高の盛り上がりを見せる展開は見逃せない!」
「一巻の終わりのシーンで、心は決まった!押切作品のセリフ回しも画風も読むほどに魅力的。ハルオがめちゃくちゃかっこよく感じてしまう。」
「ノスタルジックな小学生ライフを描くギャグかと思いきや、真正面からラブコメに突っ込む怒涛の展開に呆然!いつもの押切先生らしいオフビートな笑いが、いつのまにか読者を悶え死にさせるラブストーリーになっちゃうなんて!エッセイマンガ『ピコピコ少年』(これまた大傑作!)で描かれるように、ゲーム少年のぐだぐだなリアルを知り尽くした作者が、照れることなくそれを極上のエンタメに仕上げる手腕と気概に心底しびれます。ハイスコアガール・大野さんもすごく魅力的なキャラクターですが、私としては主人公ハルオに健気な恋心を寄せる日高さんの勝ち目なき戦いを応援せずにいられません。親友の宮尾くん、ハルオ母ちゃん、大野姉など、脇役がまたいい味を出しまくっていて、おかげでこの切ない話を余裕をもって楽しめるのが救い。それにしてもゲームのことばかり考えてたあの頃は、確かに世界の端々からゲームキャラが勇気をくれたもの。ゲーム少年の脳内世界を誠実に描写するリリカルでリアリスティックなこの演出が本当に大好きです。なんてマンガらしい表現!」
「大きなトラブルによる長期休載があったにもかかわらず、バリバリ読めてしまう作品のパワーは見事。面白いの一言。」
「また再び読めることになった幸福、感謝、安堵、その他もろもろ、全て引っくるめて一票!」
「とにかく連載が再開できてよかったなーという思いです。」
「危険だよなぁ...。素直に1990年代格ゲー回顧マンガにしときゃあいいのに、ラブコメを絡めることで同時代、同年代のボンクラに「ゲームと彼女、ふたつが共にあった青春時代」を幻視させうるのが超危険。悪質なファンタジーだと思う。不幸としか言いようのない著作権侵害・刑事告訴から絶版、糞袋中年への流れも今となっては笑い話なのでこれを機になんか賞でも取ったり、流行ったりしたら良いんじゃないでしょうか。」
「これはもう好きなので...なんといっても、各キャラクターの愛嬌がたまりません。一時期の困難を乗り越え続きを描いてくれたことに拍手、そして展開としてもアツイ。ヒリヒリする、あの表情。男性にも女性にも勧めたい!」
「ギャグ中心でテンポの良い展開に次々ページを進めていると不意にキュンとさせられる恋愛要素が散りばめられてるのがとてもニクい。そしてレトロゲームの中の印象的なセリフと主人公の心情をリンクさせて読み手に焦燥感煽ってくるのはほんとズルい。」
「ゲームにしか興味がないハルオが、ゲーセンで孤高の美少女大野さんに出会って...、といった感じで始まるゲーセン・ボーイ・ミーツ・ガール。いや、ボーイ・ミーツ・ガール in ゲーセンかな...。「今は違うかもしれないけど、'90年代にはゲーマーのまわりに女の子なんかいねーよ。ガール抜きのハイスコアガール状態だったよ! ハイスコアだよ、いや、ハイスコアも出したことねえよ!」という声にするのははばかられるようなルサンチマンが湧き出してきます。そんなことを思いながらも最新刊が出るたびに読んでいましたが、今回まとめて読み返してみると印象が薄かった部分が蘇って繋がって、小春の恋心がなんだか甘酸っぱく心に迫ってきました。まとめ読みの衝撃はこちらの予想以上でした。」
「打ち切りになるのか・・と諦めていた作品の続き。ゲーマーの日常や感情をゲーマーにしかわからないのではと思う表現(またはゲーマーならついついニヤリとしてしまう表現)で楽しめる作品です。でも、今巻は作品としての一歩も踏み出した、という印象。兎にも角にも30代後半以上の(元含む)ゲーマーなら読むべきです。」
「今年、この作品が二次選考に進むと聞いて、脳裏に浮かんだのは「困ったなあ」だった。「あの騒動」に干渉されての票は投じたくないが、ノミネートされたら、騒動の影響から逃れて票を投じられる自信もなかった。だが最新刊を読んで、「ああ、どっちでもいいや」と思えた。だってあらためてしみじみいい作品なのだ。偶然なのか必然なのか、今回の選考対象の最新刊である6巻のモチーフはさしづめ「再会物語」。作者がどこまで「自分が読者に作品を届けられない」という状況と作品を重ね合わせたのかはわからないが、少なくとも読み手にとっては一定の符号を見出したくなる場面はそこかしこにあった。それが意図的であるにしろ偶然にしろ、どうでもいい。一連の流れを知っていたら、2016年の最新刊に泣かない人はいないと思う。帰ってきてくださって、本当にありがとうございます!」
「コミュニケーションが苦手で、すれ違いばかりのマンガは数あれど、これほどコミュニケーションが下手で不器用な二人のマンガはあまり見ないような気がします。そして、その不器用すぎる様が、じれったいとか、やきもきするを通り越して、純粋に応援したくなるのです。なんせ二人のコミュニケーションはほぼ格闘ゲームのみ。闘ううちに心を通わせ、戦いで思いのたけをぶつける。戦う青春純愛ストーリーといった感じのマンガです。」
「連載再開しても話の面白さは衰えず。こちらも僕ら30代前後にドンピシャのマンガです。青春を、懐かしいゲームを通じて追体験。不思議な魅力を持った作品です。」