「「ぼく 先生の顔みると イライラするんです」。新任教員の末永聖と中3男子の黒岩晶が、教師と教え子の一線を図らずも踏み出してしまうさまを丁寧に(時にねちっこく)描くオトナ向けの作品。冒頭から横溢する不穏な「暗さ」が妙に癖になる。中学生男子らしい「黒岩くん」の性急さと背伸び、はっとするような大人っぽさもさることながら、流されやすく主体性が薄く年齢の割に幼く、つまりはたいへん色っぽい「聖ちゃん」の造形がとてもリアル(2巻の登場人物紹介に「おっとりしたスキが異性を惹きつけ」とある。さもありなん)。海辺の花火大会の夜の聖と黒岩の運命的なやり取りは「よろめきもの」すれすれのあわいを縫うようにじっくり展開され、刹那だが介在するもののないファンタジーから、無神経な大人の事情に翻弄される予期された現実へと帰還する。そして夏休み明け......。すべてにおいてバランスが悪く未熟な十代と、社会人と言ってもまだフワフワな20代が押し込められた「学校」という特殊な空間の息苦しさ、それゆえの隠微さを、映画で言えば劇伴のない感じの静謐な筆致で描く。事後談かと思わせつつ、次なる展開に踏み込む2巻後半もよい(「2年で男の子は変わる」は名言では)。エロい描写があるわけではないが、とてもわいせつ。たまにはこんなマンガでドキドキするのもいい。」