「世界に対する自分の小ささと同時に、人間の可能性を識るというのは読書ならではの体験。」
「短編集がマンガ大賞を受賞したことは過去10年一度もありませんし、そもそもデビュー作に受賞させるのは、青田買いが過ぎるんじゃないのー?なんて批判もあるかもしれないですが、この実力は本物。骨太。壮大。王道。直球。」
「15世紀の中央アメリカ、冷戦下のソビエト連邦、19世紀の北極海沿岸という異なる舞台での3つのエピソードを収録するが、各エピソードに共通して描かれているのは、人間の強さである。3つのエピソードのうち特に秀逸なのは、第1話の中世の中央アメリカで戦闘士として育てられた少年であるオセロットの話と、北極海沿岸で生活するエスキモー女性のエナの話である。第3話の最後で、エナに救われた英国人男性であるウィリアムが語る、「私たち人間が世界に散らばって生きるのは、長い時間をかけて互いを知っていくためなのかもしれない。」という感動的な言葉は、世界中に多くの紛争をかかえた現代世界に暮らす我々の心に深く染みいるものである。これら3つのエピソードからは、「強くあれ人間」、「理解しあえ人間」という、著者の人間に対する暖かい視線、人間に対する期待を強く感じることができる。ストーリー展開に加えて作画もずば抜けた高水準であり、新人の作品とは思えない秀逸さである。」