「ピンで留めた前髪とランドセル。不遜な表情と銃身の長いピストルが華奢なスタイルに似合う11歳女子の凄腕殺し屋・美晴が、孫の治療にカネが必要なSP上がりのじじい・雷蔵という相棒を得て巨悪を抹殺してまわる。設定の荒唐無稽さは大言壮語なアメリカのパルプフィクションのようだが、(連載が始まった)2017年の日本では意外にリアルだったりもする。露悪的なノアール風味が、日本のコミックに特有のロリータ趣味をまぶされ、傑作の予感が息づく。返り血を浴びた無表情の決め絵がとてもいい。10年ちょっとの人生ではあるが、その不幸すぎる生い立ちが育んだ虚無の裏には、当然ながら子どもらしい「生きたい」という叫びがある。それを素直に表に出せない美晴の境遇がなにしろ胸に痛いし、その諦観が作品に乾いた独特の空気をまとわせる。それでいて、雷蔵の存在によって少しずつ子どもらしさを垣間見せるようになる描写は、パターンではあるがやっぱり読ませる。音も色もないマンガだからこそ読者の想像力を活性化させる、最近あまりないタイプのマンガらしいマンガでもあると思う。似た設定の別の作品が注目されているけれど、こっちの方が上質で指折りの娯楽作品と思います。」