「昨年に続いて推してみます。単行本が2017年に2冊出たので、わたしにとってはたいへん幸せな1年でした。高校生の男女のすれ違いを会話だけでみせる技。1巻は駅、2巻は学校の中庭、3巻は文芸部の部室といった具合に、しかもそれぞれベンチに舞台装置がほぼ固定されているのに、まったく退屈にならない技がすごい(4巻は図書館と喫茶店だとか)。たしかに高校生の生活半径はそれくらいで、それでも退屈などとは無縁なのかもしれないが、それをマンガという道具立てでやるのは生半可ではないはず。構成力とか画力とか観察力とか演出力とか、読めばそういう「マンガの技」を存分に享受できます。メガネ男子・東くんに恋するあまりに挙動不審なヒロイン・相沢さんに関して、作者は「個別に言うと、相沢さんだったら、東くんが軽いジョークを言って相沢さんが冷たい顔をしているところ。ああいう、好きな人相手でもシビアに見てる部分が、私の中で一番女の子だなと思うところなので。」(2016年の講談社コミックプラス「ろびこさんスペシャルインタビュー」より抜粋)と解説している。それを10代の頃に知っていたなら...と遠い目をさせるリアルさがいい。なお、相沢さんが赤面した表情はパターンが実に豊かでどれもたいそうかわいく、男女を問わずそれを確かめるだけでも単行本を購入する理由になりうると思います。絵がうまい少女マンガはやっぱり良い。」