「80年代から第一線で描き続けるゆうきまさみは立場的には大御所マンガ家だと思いますが、その大家然としたところのない、ひょうひょうとした佇まいはなんだろう。作風も、インタビューなどに登場するご本人の風貌も、その発言も(サイト「ぶくまる」に掲載された田中圭一によるインタビュー「わが生涯に一片のコマあり」など非常に好ましく読める)。わたしが少年サンデーを愛読していた80年代中~後期に連載された「究極超人あ~る」など、きたる30年後の「文化系」人気を予見していたように思う。そしてこの「でぃす×こみ」。派手さはないが、じわじわと染み入るように、作中で描かれる世界に憧れさせる。その世界と読み手の自分の間には特に接点や共通点などないはずなのに。「あ~る」とおんなじだ。はからずも兄の作品を偽ってBL作家としてデビューすることになったマンガ家志望の女子高生をめぐる「ややドタバタ」。爆笑ではないがクスクス笑える。「BL」に対する食わず嫌いの偏見とある種の差別感覚が、この作品によって払拭されたマンガ読みは少なくないのでは、と推測します。わたしはそうでした。毎回カラーの口絵の彩色を別の人気マンガ家が代わる代わる担当する趣向も楽しかった。」