「その手のお店で出会った女の子に運命を感じて一途に入れ込んだあげく、彼女の知られざる衝撃の事実を知って・・・という第1巻から一転、放蕩の2巻が年末に刊行された(これで完結)。主人公である30代男性、非正規雇用の美術教師サトミンはじめ、ダメダメで不機嫌で現実逃避しがちな大人が多く登場する。もう若くもなく、先の見通しもたいしてない。理想の恋愛、理想の関係になど,きっと自分は近づくこともできない、と経験からすでに知っていて、自分や自分の周囲のいろいろをうっすら見切っている。そんな「気分」がまったく無縁という人は少ないだろう。そのような彼や彼女がくっついたり、離れたり。吹き溜まりのような、惰性のはてのどん詰まりのような、見方によっては絶望的とも言えるエピソードが次々に繰り出される鬱展開で、読んでいるとだんだん落ち込んでくる。モノローグはネガティブな箴言だらけ。よくぞここまで徹底して描き切ったというか・・・。でも、というか、それだけに、というか、読み進めるうちに開き直ってきて、少し前でも向こうかね、という気持ちにさせてくれるのだ。底のない暗さを見据えるうちに見えてくるかすかな明るさ。探しているものは身も蓋もないところにある。取り繕うのもバカらしいほどのむき出しの欲望がカタチにする「確からしい何か」を求める祈りのような気持ち。それを持ち続けることはけっこう大事なんだ、と気づかせてくれたようにも思う。」