「自覚ない系美少女なのにストーカー気質で挙動不審な女の子と、頭良さそうなのに実は成績が振るわない、それでいて小説好きなメガネ男子。ともにヒトコトではとても言い表せないキャラクター造形なのだけど、とにかくそんな惹かれあう高校生男女を中心とした、ワイワイ文化系会話劇も連載開始からすでに4年目。ほぼ駅のホームのベンチだけで展開する第1巻はビックリだった。このあいだ発売された最新第5巻は群像劇の要素が前に出たけれど、それはストーリーが行き詰まったからというわけではなく、むしろ意味のある寄り道だし、相沢さんと東くんの仲は、その寄り道を経由することで深まり、互いに半歩踏み込む展開に。絵柄のかわいさ。練られたやり取り。もどかしさをこそ楽しむ永遠の高校生活的日常・・・。赤面、哄笑、当惑、安堵、抑えつつの歓喜、自意識過剰な自分にツッコミを入れる妙な冷静さなどなど、描き込まれる表情のひとつひとつ、ヒトコマヒトコマが見応えありの、ほんとうにおもしろい作品。いまの高校生を取り巻く現実をきちんと意識しつつも、夢のようなたのしい理想の日常を描く、少女マンガの今日的到達点だと思う。同時に、読者であるリアルの中高生にとっては現実の息苦しさ、生きづらさを忘れさせてくれる質の高いファンタジーではないかと・・・などと、変にまじめに語ってしまったが、でもそう思う。未読の方はぜひ単行本既刊5冊をまとめ買いして、日の射し込むソファーにでも寝ころがって、一気に行っちゃってほしい。楽しい気持ちになれるはず。」