「どう考えてもこの賞向きではないが、昨年読んだマンガの中で最も「刺さった」作品。でも、安易に薦めることはできない。「人肉食の風習」「村八分サスペンス」「児童虐待」「グロ」......これらのワードに耐えられそうな人向けです。つまり読者をすごく選ぶ。しかし、決していわゆる「B級ホラー」ではないのが本作のすごいところです。女性キャラがほとんどおらず、キャラクターの大半が汚くてむさ苦しいオヤジたちですが、これがリアルで妙に生き生きしている。スーパーナチュラルな要素が一切なく、心理の綾や人間関係のドラマだけでハードにぐいぐい押してくる。絵も演出もハイレベルで、とにかく緊張感があって巧い。毎巻の引きの強さもただ事ではありません。ある事件で大きく傷ついた家族の再生の物語でもあります。現在4巻、かなり終盤に近づいており、どう考えても凄惨なラストしか予想できないが、何とか希望ある方に向かってほしい。私は単行本が待ちきれなくて、連載誌の「週刊漫画ゴラク」で追っているほどです。この作者は、本作の前に『鳥葬のバベル』という怪物ホラーも描いていて、後からそれも読んでみましたが、はっきり言って天と地ほど違う出来。何でこれほどうまくなったのか、不思議なくらいです。」