「本作のテーマを表すフレーズとして、上記のセリフがよく出てきますが、完結第6巻の、あのラストシーンにこの言葉がかぶさるのは衝撃的でした。改めて第1巻から読み返すと、作者が最初からこれをやるつもりだったとわかる。もともとかなり好きな作品でしたが、これで評価がさらに一段上がりました。明治初期の長崎を舞台に、モノの持ち主を透視する能力を持つという少女が、謎の青年が経営する西洋道具屋に雇われるところから物語が始まります。軽めの「アンティーク趣味+事件解決もの」かと思いきや、舞台はたちまちパリにまで広がって、ジャポニスムと浮世絵ブームの黎明期を目撃するという、文化的にも壮大な物語になっていきます。これを、高浜寛という、デビュー時から日本とフランスを自在に往還してきた異能の作家が描くのだから、なおさら意味がある。現代のマンガ文化が、いにしえの浮世絵とダブって見えてくるわけです。どっちかというと「バンド・デシネ」寄りだった高浜さんが、ど真ん中の「マンガ」を描ききったという意味でも画期的な作品だと思います。」
「時代の進歩とともに主人公の成長を見守るカタルシス。わくわくする気持ちや、それとは対象的に陰のあるキャラクター達、でもみんないい人でちょうどいい塩梅です。ゆっくり見守ってきましたが2019年完結。ラストは以外な展開でしたが、あとがきを読んで納得しました。装丁も含めて、本として手にとって読んでほしい作品です。」
「去年に引き続きの投票です。今回が最終巻。最後のコマ衝撃的でした。と、思ったら後書きを読んで納得。思えば高浜寛先生は一貫してリアルを追及していたな、と。。アンティークをはじめ出てくる全てのものが刺激的で膨大、且つ豊かな知識を垣間見れたのもこの漫画の醍醐味でした。物語二人のヒロインの邂逅が「ニュクスの角灯」の意味だったとは思いもしなかった。美世の渡した言葉が、幸の希望となったことを祈ります。最後まで余韻の残る作品でした。高浜寛先生、長きに渡る連載、本当にお疲れ様でした。」