「『ニュクスの角灯』を毎年投票し続けていました。(手塚治虫文化賞おめでとうございます!!)『扇島歳時記』は『蝶のみちゆき』の続編にあたり『ニュクスの角灯』よりは前のお話。2作品に登場した廓生まれの「たまを」が14歳の時のお話です。両親も知らず、遊女になるという残酷な宿命を背負いながらもいつか来る「その時」を待つ禿として過ごす時間が静かに描かれています。普通の遊女ものと違う点がとても面白い。長崎が舞台のため、異国文化との交流やキリスト教の存在が色濃く出ていたり。出島のオランダ商人の家で働き、様々な人と出会い「廓の外」を体験して「たまを」は成長していきます。炊事、洗濯、お使い、料理、、、オランダ商人って女郎さんと住んだりしてたんですね。知らなかった。。知らなかった世界ですが、キリスト教の存在等リアルに表現されていて本当にこんな風景だったのだろうな、と映像を垣間見ているようです。この作品は「長崎三部作」の最終節ともいわれているそうですが『扇島歳時記』が私は一番好きな気がします。どの作品も大好きなので、甲乙はつけがたいのですが。「たまを」が明るくあどけなくて、遊女になる未来が一層切なくなります。季節感を大事にして、人との出会いを大切にして。自分の運命を呪わず、楽しむ工夫をして逞しい。周りにいる誰かを大切にしたいと思える作品です。」