「ノーベル文学賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの同名の書籍の漫画化。ソ連の(特に対ドイツ戦で)戦っていた女性たちの姿をオムニバス形式で描く。『敵と言ったって人間だわ』『ベニヤの標的は打ったけど』。18歳の少女狙撃兵が初めてドイツ兵を撃つ時の心理描写は、その絵とともに忘れられません。生理の血を洗い流すため、爆撃の中で河に入り死んだ少女たち。ここで思い知るのは、戦争という人の営みに反するものがいかに悲惨であるのか、という普遍的な真理です。」
「本作で描かれる戦争の姿は、われわれ日本人が一般に見聞きしてきた戦争のありかたとはずいぶんと違う。背景知識なしに本作を読むとおそらく面食らうことが多いだろう。しかし、第二次世界大戦の独ソ戦において、当時まだ若い共産主義国家であるソ連がドイツにギリギリまで追い込まれ多大な被害を出した後に劣勢を覆し反攻していく過程、言うならば『勝ち戦』から生還した女性たちの経験を多く描いたものが本作だという大つかみでの知識があったとしても、その視点からのみ消費しきれるものでもない。監修の速水螺旋人さんがブログ記事で個人的補遺として『台詞はただの台詞ではない。元兵士たち、あの戦争、あの時代、あの国について我々がなにを知っているというのか。この本は理解するためのものではありません。理解していないことを知るための本です。』と述べられている通り、思索を伴うことで読み取ることのできる余白、奥行きはとても広い。そしてさらに2巻では...。その意味においてコミック化されたことが極めて貴重な作品。」
「第二次世界大戦中の旧ソ連軍の退役女性兵士の実録インタビューをまとめたものが原作。インタビュイーの喋り口調が原作そのままにネームが作られているようで所々不思議な読み心地。若干の読みにくさを感じなくもないが、それを加味しても是非読んで欲しい。女性が男性と同じように戦地に赴き戦うということで、男女の性差を見せつけられて衝撃を受けました。自分が僅かに知っていた戦争というものの知見がひっくり返って、色々なことを考えさせられる作品です。」
「第二次世界大戦のソ連女性従軍者へのインタビューのマンガ化。よくこれをマンガにしようと思ったな...。正気ではない。なにぶん元々が世界大戦という無貌の怪物の渦中に放り込まれた一女性の叙述なので、何もかもが唐突で鮮烈で強烈で異常で過剰で、混乱の極致にある。読むと鉄柱で頭をぶん殴られるようなエピソードが続く。それが、そんなものですら、絵物語として、マンガとして、滔々と読めてしまうということ。それを許すマンガっつうジャンルの熟成度、この国の文化状況もすごいと思う。」
「難しく、重いコミカライズをキチンとやってくださっている感に脱帽。原作ともども、自分も襟を正して読まねばと思わされる作品。」