「マンガハックに2018年から掲載された6話分をまとめた徳間書店版第1巻(紙が厚くて本がずっしりしていてうれしい!)が良くて、ずーーっと自宅の本棚に面陳していたのだが、待てど暮らせど2巻が出ず...。それが、ことのいきさつはあまり知らないのですが集英社に版元を移して昨秋ようやく第2巻が刊行された。まずはめでたや。このマンガのどこが好きなのかというと、いろいろあるけれどまずは絵が好き。くっきりとしていてりりしく、それでいて細やかでやさしい女性を描かせるとウオズミアイ先生はとても冴えると思う。20代、30代、40代の男女による共同生活の舞台となる街は熊本。2016年4月の熊本地震がモチーフの一つになっていて、物語にそこはかとない陰影を感じる。ウオズミ先生は調理師免許を持っているそうで、作中登場する手料理の数々もまたよし(胡麻豆腐の揚げ出汁、餃子...)。料理そのものがおいしそうに描かれているというよりは、みんなで囲む食事のシーンからおいしい雰囲気があふれ出る感じ。おいしいものを食べ、親密な空間でリラックスし、互いに思いやり、それぞれの個性を認めて尊重し、個として生きるために力を合わせる。マウンティングとかそういうのとは無縁に、楽しく、気分良く生きていく。そのような生き方にはたぶん、あきらめなければならないことも少なからずあるのだけれど、でもそういう風に自分は生きていくんだ、というそこはかとない『決意表明』みたいなものが、さりげなくではあるが意識的に描かれていて好もしい。掲載誌がココハナに移った第2巻では、3人それぞれの家族や恋人など周囲の事情も入り込んでくるが、それも感情的に排除するのではなく、逆にきちんとかかわって、考えて、話し合って、分かり合って前に進めていく。それが、昨今のやたら断絶だらけの世界を忘れさせてくれて、読んでいてホッとする。あと、やっぱりネコがいいよなあ。」