「圧倒的な取材力を誇り、医療モノを中心としたコミックエッセイを作り続けた水谷緑さんが、精神科ナースを主人公につくったゆるストーリーマンガ。精神医療をテーマにしたその丹念な取材は、この興味深い、そして我々と本当は地続きな対象を徹底的にフラットに見つめて、『こうあるべき』という浅い理想に囚われることがない。『社会復帰した人が嬉しいのがwindowsのようこそ画面』『なぜ人は混乱するとう○こで何かをするのでしょうか』などという、想像力で作れないエピソードを拾い上げる。もちろんそのエピソードは作品にリアルに描かれているのだが、それだけだと今までの質の高いコミックエッセイと同じ。そこが、今回はストーリーマンガ。作者としての解釈が付け加えられて展開されるのだが、その展開が、他にはない真実を描き出している。せめて、2巻の第9話を読んで欲しい。この単話のラストは、ジャーナリズムの到達点だと思う。」
「人の心ってどうしてこんなにもままならないんだろうなと思う。主人公のナース・夜野さんの焦りやいらだち、苦しさや戸惑いが胸に迫る。『プロなのに』『プロだから』の間を行き来する葛藤はリアルだし、自分だったらどうするんだろうと考えさせられる。でも、ただただ悩むだけではなく、ちいさな救いもある。悩みつつも一歩を踏み出したい人におすすめ。」