「虚実ないまぜの私小説が売れた後、書けないスランプに陥った30歳の女性小説家が、挽回をかけて因縁の元カレの自死の謎の究明に乗り出す。しかしこの主人公・加治理津子がそもそもとんでもなくぶっ壊れた人物で......、などとあらすじを書いても何が何だか、本作の凄さを知るためには既刊6冊を一気読みするしかない。1年前も推したのですが、2021年に5巻、6巻とさらに2冊を重ね、マンガとしての面白さにドライブがかかりまくった状況。犯罪すれすれ、人格崩壊寸前の理津子の行動は読んでいて爽快感を覚えるほど。まじめな人は嫌悪感を覚えるかもしれないですが......。ストーリーがどこに着地するのかは現時点で想像も付かないものの、筋立てが分かりやすいかどうかより、理津子をはじめたくさん登場する女性たちの圧倒的な存在感に飲み込まれる。ここで多くは語らないけれど、いまの日本社会のまったくしょうもない状況を、登場人物を通じて怒りをもって断罪しつつ、ページをめくらずにはおれないエンタメにも昇華させる作風は、世の中をリアルに映して発展してきたマンガという表現の到達点のひとつのように思えます。げに恐ろしや。」