「将棋が頭脳のスポーツなら数学も同じように頭脳のスポーツだ。それが証拠にオリンピックがあって大勢の若者たちが金メダルの獲得を目指して"競技"に励んでいる。中学生のス小野田春一もその一人で、エリート校に進学しようと頑張っていたものの数学以外で引っかかったのか受験に失敗。公立校でひとり数学を頑張ろうとしていた彼に、数学好きらしい七瀬マミという同級生が声をかけてくる。ボーイ・ミーツ・ガール。かというと最初は興味がないと袖にしていた春一。けれども春一が与えたヒントを膨らませ、どんどんと数学的なセンスを伸ばしていく七瀬と春一は親しくなって、同じ数学オリンピックを目指すようになる。そこから始まる恋がある。かというと数学オリンピック対策講座でマミはトップの成績を叩き出すようになり、追い抜かれた春一を絶望させる。ガリ勉と天才によくある構図から、春一は立ち直ってマミに追いつき追い越そうとして頑張って、共に高みへと至れるのがかが藏丸竜彦『数学ゴールデン』という漫画の読みどころだ。第3巻まで刊行中のシリーズで次々に繰り出される数学の問題は、数学嫌いには読んでも意味が分からない難問ばかり。それなのに面白いのは、突きつけられた壁に対して七瀬がどう攻略するかを考える姿、春一が諦めないで挑み続ける姿に、スポ根漫画を読んでいるような楽しさを感じてしまうからだろう。読めば自分も数学に挑戦してみたくなる。あるいは何かに熱中してみたくなる。それがスポーツだったら一種の逆転現象。スポーツが苦手で勉強に打ち込むことも、勉強が苦手でスポーツで大成功することも、どちらも素晴らしいことだと証明してくれている訳だから。」
「数学に興味がない人こそ『読んで』と言いたいほど。数学の持つ魅力的な世界、イメージをマンガで伝えるってとても難しいと思うのです。作中のワードについて、調べずとも読めますし、調べるとなお一層楽しめます。一粒で二度おいしい。」