マンガ大賞2024

「自分と向き合うということ。自分を知ろうとすること。自分のほんとうの声に耳を澄ませること。全てに苦しみは伴うものだと思います。でもそうしなければ、何かを産み出すということはできないものだと思っています。松本大洋さんの、ずっとずっと深いところまで覗き込んでいくようなエネルギーに、心を鷲掴みにされながら読みました。主人公塩澤の不器用、実直、そして朴訥な人となりが、読者にとってのレンズとなって、それを通して見えてくる他者の瑞々しい感情の波。とても静かで、それでいて情熱的な、漫画です。」

「松本大洋さんのマンガを前にして今更いうことではありませんが、とにかく絵が、画面が、かっこよすぎる...！感情の渦巻き、日常の空気、温度、すべてが脳みそにダイレクトに届くような圧倒的な絵力。マンガに携わる人間たちの物語というだけでマンガ読みにはたまらないのに、この絵の力にはあらためて衝撃を受けます。必読。」

「自分自身、年齢を重ねるごとに漫画との距離を測る機会が出てきました。この作品の主人公は『元漫画編集者』。ドップリと漫画の世界にいたこともあって、よりディープに漫画と人生の『オトシマエ』を模索している姿に親近感を感じずにいられません。」

「題材は漫画だけど、キャリアを重ね続けるプロなら必ず味わう葛藤がテーマ。主人公は早期退職した編集者。そして数々の漫画家たちが登場し、色々な漫画とのかかわりがドラマを生み出す。前時代の漫画だって構わない、セールスなんて関係ない、本物はそこにあるのかどうか？ある意味究極の趣味に走った主人公の行きつく先はどうなのか？『漫画が斜陽産業だ』と言い切って描く世界だけに染みる。」