「傑作の予感を残して幕を閉じてしまった『図書館の騎士団』の大須賀こすも先生が、此度は一転、現代を舞台に、しかも児童養護施設という抜き差しならない空間を舞台にした作品。各章には登場人部たちの名前が掲げられている。そう、誰もが他の誰でもない自分の名前を持つ存在だということが、そして、誰もがその自分の人生という物語を生きる唯一無二のかけがえのない存在だということが、この作品の大前提にある。そしてその人生はむずかしい。児童福祉というデリケートな問題を扱うに、大須賀先生はきっと綿密な取材をし、この物語が誰かのやわらかいところに触れてしまうかもしれないことに、きっと神経をとがらせて慎重に慎重に表現を選んだのではないかと思います。現代社会の現実を知るほどに、心の底には怒りを忍ばせながら ? しかし主人公・岡本亜希のように ? 思うままにペンをふるうのではなく、落ちついて、冷静に、丁寧にこの物語を届けようとしてくれたのではないかと思います。」