選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2023一次選考作品

『セシルの女王』こざき亜衣

  • 「昨年えらくツボにはまった歴史劇。英女王エリザベス1世の宰相ウィリアム・セシルが主人公だが、目下のヒロインはエリザベスでなく、彼女の母アン・ブーリン。夫ヘンリー8世が前王妃を離縁するきっかけとなり、王宮にドロドロの嵐を起こすアンが実は可憐な女性で、ただ一人のナイトがセシル少年という設定に燃える。自分の死を悟ったアンが幼いエリザベスに『ウィリアム・セシルを待つのよ』と言い聞かせるシーンには泣ける。英国国教会ができたのは、ヘンリー8世の離婚をローマ・カトリック教会が認めなかったから。つまり『男の世継ぎ』が生まれないことが根本理由だった。そんな単純だっけ?と思ったが、本当にそうらしい。これが巡りめぐって後にアメリカ独立に至ったことを思えば、アン・ブーリンこそ世界史を動かしたヒロインと言えないこともない。このように、複雑な西洋史をわかりやすく解きほぐしてくれることも魅力。よしながふみの『大奥』にハマった人はぜひ。女王となったエリザベスは生涯独身で、ウィリアムを『私の精霊』と呼んだという。そのシーンをこざき亜衣のペンで読みたい。」

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