選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2024一次選考作品

『劇光仮面』山口貴由

  • 「こんなに格好よくも精神を揺さぶられる作品には久しぶりに出会いました。物語はヒーローもののアクタースーツを作る大学サークルの人間たちが、社会人になって先輩の葬儀で久しぶりに集まるところから始まります。サークルメンバーは大人になって社会に適応する中、主人公だけが表面上では繕いつつも内面は全く社会と隔絶して生きています。ただの厨二病という現代的なカテゴライズではなく、主人公の思考や行動には信仰に近い信念があり、自分と社会のギリギリのところで苦しみもがきながらも、ある種達観した思想が持っていて、それを今もアップデートしながら何とか生活しています。ヒーローと怪人。現実には存在しないモノの魅力、魔力に見せられた主人公が、現代社会における価値観とのギャップから、徐々に心身ともに綻んでいく物語、と思っていたら...もうとにかく4巻まで読んでください。もうやばいっス。自分が人生で読んだ漫画の中で一気にトップ10に入りました。」

    「信念がどこまでも純粋で狂気じみていても美しく感じてしまう。」

    「2023年は『シン・仮面ライダー』も公開されたし、まずはこれか。そういえば山口貴由の描いてきたマンガの主題は『何かをまとって/被って戦う者』だったな、と。その中心ド真ん中をまたも、またも、またも描こうとする。例えば日本刀のような、それをふるえば間違いなく致命に至る何事かをぞろりと扱う空気感/緊張感がすごい。」

    「『どこまでがリアルでどこからがファンタジーなのか、その境目が侵されていく。やばい漫画が生まれてしまった。』と書いたのは昨年のコメントでしたが、毎年違う作品をと思っているものの、ふたたびあげざるをえません。フィクションだからこそ追求されるべきリアリティ、そしてフィクションの中にこそ光るリアルというのがひとつのテーマかと思っていたんだけど、2023年の物語はより複雑に、リアルのリアリティのなさよ!さらにやばく展開していったよ。」

    「四巻でついに『本物』が!と話題ではありますが、この物語の肝は『非常時のヒーローとは平時の狂人』なのであって、第一話からずっと本番なのです。彼は言っています。あなたはもっと信じていい、いや、信じていることをもう隠さなくていいんだと。」

    「特撮好きな方にはたまらない単語やシチュエーションが盛り盛りな、山口節全開なヒーロー漫画です。山口先生の描くヒーローは色気と覚悟があって素敵ですね!話がまだ謎だらけなので。これからどうなるのか気になります!」

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