選考作品へのおすすめコメント
マンガ大賞2025一次選考作品

『ねずみの初恋』大瀬戸陸

  • 「恋というのは交通事故のようなもので、不意に避けれず、見舞われるものだ。それなりの運動量をもった質量同士がぶつかり合い、熱に代わり、空に消える。色々なものがバラバラにちぎれ飛んでキラキラと光ったりして綺麗だったりもする。それを見たものはこういうしかない『あ~あ、ありゃ助からねぇな...』そういう初恋マンガ。致死的。助からない。」

    「このようなある意味殺伐とした作品がメジャー誌に普通に掲載され、それが普通に人気作品になっているところが、2020年代の日本社会が抱える困難さを象徴しているように思う。丸っこくてかわいらしい10代女子が闇社会に殺戮マシンとして育てられ、という『なさそうで、なし』な設定とわかっていても、鬱展開にからめ取られるように読み続けざるを得ないアリ地獄的な吸引力が、かつての『ウシジマくん』などの『ありそうで、あり』ゆえにドライ、なのでどこかエンタメとして安心して読めるというタイプのマンガとは違う。これくらいでないともはや『恋』に現実味を感じることはできないのかもしれない。マンガは社会の鏡。分断が進んで誰にとっても他人の命が軽くなった世の中の状況を下敷きに、凄惨で容赦ない殺人と暴力を描きながらも『小さな恋のメロディー』みたいな純愛を投入していちるの希望をうかがわせる(でもバッドエンドぽい予感)。普通にラブストーリーを提示できなくなった時代の、祈りのようなラブストーリー。」

    「殺し屋として育てられた機械のような少女が、無垢な少年と出会って純粋な恋心を抱く物語。恋を知り、普通の生活を望んでも、殺し屋の宿命と輪廻からは逃れられない...。きらきらした日常と、命のやり取りの緊迫感のギャップに引き込まれます。」

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