「柴門ふみさんは、バブルの時に流行りすぎていたから、過剰に流行作家として見られている気がする。個人的には、過去の実績とはまったく無関係に、リアリティのある描写と設定とセリフの上に、スリリングなストーリーを産み出し続けているとても実(じつ)のある作家さんだと思う。薔薇村、という東京から2時間離れたリゾートである村に様々な事情をもって越してきた人たちを描くこのオムニバス作品も、30-70代の人間の抱える生活実感と、その人生の成り立ちが実は奇跡的で緊張感にあふれていることを語り尽くした上で、人間のダメさの向こうにある善性を描いた読後感がすばらしい。疲れているときも、調子に乗りすぎているときも、どちらにも効く万能薬。」